日本の国立大学が国際バカロレア(IB)入試枠を拡大している背景には、国家的な戦略と大学側の独自の思惑が複雑に絡んでいます。

 

一見すると「受験者が少ないのに定員を増やすのは非効率」に見えますが、その理由を多角的に分析します。

 

 

1. 文部科学省(国)の政策主導

(1) グローバル人材育成の国家戦略
 

「日本再興戦略」(政府方針)で「IB認定校200校」が掲げられ、IB資格取得者の受け皿として国立大学の役割が期待されています。

目的:
海外のトップ大学と競争できる人材の確保(特に理工系分野)。

日本の大学の国際ランキング向上(※IB生は英語力・探究力が高く、研究実績に貢献しやすい)。

(2) 国際バカロレア機構(IBO)との連携強化
 

日本政府はIBOと協定を結んでおり、「IB卒業生の国内大学進学率向上」を約束しています。

例: 東京大学や京都大学はIBOと直接連携し、入試要件を調整しています。

2. 大学側の本音と戦略
 

(1) 留学生・帰国子女の囲い込み
 

IB資格者は「英語力+学力」が保証されているため、以下のメリットがあります:

留学生募集の効率化: 海外からの優秀な学生を、個別試験なしで獲得可能。

大学の国際化指標向上: 「外国人学生比率」は世界大学ランキングの評価項目。

 

 

(2) 一般入試との比較優位性

IB入試は採点コストが低い:

一般入試(共通テスト+個別試験)に比べ、IBスコアの換算は事務作業が簡素。

定員割れしても「国際的な入試制度を整備している」というPR効果が大きい。

(3) 学部改組を見据えた先行投資
 

例えば、「国際共創学部」などの新設学部では、IB生を主要なターゲットにしています。

地方国立大学(例:広島大学・九州大学)は、「IB入試枠拡大=地域のグローバルハブ化」をアピールし、自治体からの補助金を獲得。

3. データから見る「受験者不足でも拡大」の矛盾
 

(1) 実際のIB入試利用率(2024年度例)
 

大学名    IB定員    志願者数    入学者数
東京大学    約30    約50      約25
大阪大学    約20    約15      約10
地方国立A大学    約10    約3    約1
 

(2) 拡大が止まらない理由
 

「見える化」効果: IB枠があることで、海外のIB校から日本の大学が認知されやすくなる(長期的な留学生増を見込む)。

政治的要因: 文科省の補助金(「スーパーグローバル大学創成支援」など)と連動している場合が多い。

4. 保護者・生徒側の本音との乖離
 

(1) IB生の進路実態
 

国内IB生の約60%は海外大学に進学(※東京学芸大学調べ)。

国立大学のIB入試は「英語外部試験(TOEFL等)の高得点」を求める場合が多く、国内IB校生にとってハードルが高い。

 

 

(2) 大学側のミスマッチ

例: 地方国立大学が「IB生向けに英語授業を増設」しても、実際は日本語DP(日本語でIBを取得)の生徒が志望し、英語需要が低い。

【まとめ】
IB入試枠拡大は、短期的な定員充足ではなく、国のグローバル人材政策
大学の国際ランキング戦略
自治体の地域振興

 この3点がが複合的に作用した結果です。

 

ただし、「受験者数<定員」の構造は今後も続く可能性が高く、大学側はIB生の囲い込みに本腰を入れる必要があります。

最新動向としては、2026年度入試から「IBスコア+面接のみ」の入試を導入する大学も増えているため、継続的な情報収集がおすすめです。