私は、大学教授の推薦で1973年にハウスメーカーに入社し、研究所に配属されました。
入社した年には大きな出来事が二つもありました。
一つ目は、私が入社したハウスメーカーの創業者であり会長であった深尾茂さんの死です。
会長は、戦後の住宅復興に貢献した実業家です。1973年5月に自宅で亡くなりました。
享年64歳でした。
早すぎる死でした。
もう一つは、同年10月に第四次中東戦争が勃発し、原油価格が4倍に高騰したオイルショックが日本に影響を及ぼしました。
オイルショックは世界経済に影響を与え、日本の高度成長を終わらせる要因となりました。
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深尾茂会長の死とオイルショックは私の人生の方向を大きく転換させた出来事でした。
私が社会人になった当時は、週休5日制度はありませんでした。
研究所の藤井次長が率いるグループでは、土曜日にテーマを設けてディスカッションや架空のプロジェクトの検討をしていました。
この架空プロジェクトでは、太陽光を利用した住宅(ソーラハウス)を考案し、私の入社1年前にある展示会でソーラハウスの紹介をしていました。
ソーラハウスの展示は、オイルショックによる省エネ開発を検討していた産業省の目に留まり、シャープとの共同研究につながりました。
共同研究は、1年ほど先の話です。
深尾茂会長の死は、ハウスメーカーにとっても大きな打撃でした。
経営陣の無能が露呈し、5年先には倒産となりました。
深尾茂会長の死かオイルショックのどちらが無ければ、どのような人生だったのか興味深く考える歳になりました。