九月偏位九月が来るたび沈んだ社屋の影が別の場所の天井に触れる 転じた日付の裏側で名もない机がまだ誰かの手を待っている 同じ月に小さな掌が生まれ世界の重さを測ろうとしていた 測りきれないまま空気だけが形を持った 季節の境目は折れた記憶の断面に似ている夏の残滓が退き秋の入口がどこにも属さないまま立っている 九月は失われたものと生まれたものが 互いの名を知らぬまま同じ椅子に座る月だ その椅子の脚が過去と未来のあいだで軋む軋む音だけが私の内部で続いている