建築基準法では、原則として全ての建築物を対象に、工事着手前の建築確認や中間検査、完了検査といった必要な手続きが設けられています。

 

 しかし、都市計画区域等の区域外においては、一定規模以下の建築物は建築確認や検査の対象外となっています。

 

 また、都市計画区域等の区域内であっても、階数2以下かつ延べ面積500㎡以下の木造建築物などでは、建築士が設計及び工事監理を行った場合には、建築確認や検査において構造規定などの一部の審査が省略される制度があります。、

 

 これを「4号特例制度」といいます。

 

 近年は、省エネ設備の設置といった省エネ化の促進に伴って建築物が重量化の傾向があり、地震被害リスクが高まっています。

 

 このようなことから、木造建築物に関する構造安全性の確保が必要な状況が指摘されていました。

 

 これを受け、2025年に施行される建築基準法の改正では、建築確認や検査の対象外となっている建築物の範囲や「4号特例制度」の対象となっている建築物の範囲を縮小しました。

 

 2階建て以上または、延べ面積200㎡を超える建築物については、木造非木造の構造種別や都市計画区域等内外にかかわらず、建築確認・検査の対象となります。

 

 これにより、工務店などが建築してきた一般的な注文住宅や建売住宅の規模の2階建て木造住宅についても、構造規定などの審査が省略されず、改正法の施行の2025年以降は、建築確認の際に構造計算書等の設計図書の提出が求められることとなります。

 

 なお、200㎡以下の平家については、引き続き特例の対象となります。

 

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 4号特例制度の導入から見直しまでの経緯を考察します。


 4号特例制度は、建築行政職員の人員が不足する中、建築確認や完了検査が十分に実施できなかったことなどを背景に1983年に導入されました。

 

 その後、1998年に建築確認・検査の民間開放等によって、建築行政職員の人員不足が解消されました。

 

 一方で、民間開放により、姉歯事件に象徴される不適切な設計・工事監理が行われ、構造強度不足が明らかになる事案が発生しました。


 これを受け、2007年に施行された改正建築基準法により、建築確認・検査が厳格化された影響で、建築現場に混乱が生じたことから、2010年に当面は制度を継続することが公表されました。

 

 その後も、引き続き検討すべき課題として同制度の見直しが位置付けられてきました。

 

 また、2020年には、建築確認・検査の対象外となる建築物や4号特例制度の対象となる建築物も含めて、全ての建築物について、配置図、各階平面図、構造計算書等の構造関係図書、工事監理報告書等の保存が建築士事務所に義務付けられました。

 

 こうした経緯に加えて、構造安全性を確実に担保し、安心して木造住宅を取得できる環境を整備するため、今回、同制度の見直しが行われることとなりました。