今、住んでいる家が気に入っていて、居心地が良いと、人の生きる力がみなぎります。
私が子供のころは、1950年代から1960年代は、街は今より汚れており、空は「光化学スモッグ」が多く、高度成長期の公害が誇っていました。
そのころの住宅は、居心地がよかったかどうかは、今の価値観では、そうではなかったかもしれません。
日本の高度成長期の公害もほとんど駆逐され、1980年代には、日本は、世界でも有数な清潔な街へと変貌していきました。
ル・コルビジェは、「住まいを中心に一人の人間の視点で建築も都市みていくべきもの」と言っています。
いわば、生活するために住宅はあるのです。
居心地の良い建売住宅やマンションが多く建設されていきました。
当然、多くの日本人が居心地の良い家に住んでいました。
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しかし、1990年代から始まった「失われた10年」で多くの方が住まいを失いました。
その結果、「ホームレス」といわれる方々が増え、社会問題となりました。
無臭だった街が戦後に戻ったようでした。
その後、ホームレス支援法や福祉関係団体のご尽力で、家を失った方々が新しい住まいに住め、生活保護や雇用の支援などで、街は、清潔で無臭な世界に戻りました。
私の子供のころは、今住んでいる家よりも、生活感や環境が悪かったかもしれません。
しかし、私は思うのです。
同じ屋根の下で住む人たちの人情、近所の人情を考えれば、
現在の清潔で無臭な「心地よい家」に住んでいる私たちは、本当に幸せなんだろうかと考えてしまいます。