コンテクスト【context】という英語があります。

 辞書では、文脈。脈絡。状況。背景。前後関係。

と書かれています。

 

 私は、コンテクストという言葉をよく使います。

 一つ目は、「背景」です。

 二つ目は、「文脈」です。

 一つ目の「背景」は、前回のブログのテーマです。


 それでは、「文脈」について。

 

 この「文脈」を表すコンテクストは、コミュニケーションの概念です。

 アメリカの文化人類学者、エドワード.T.ホールは、「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」という分類法を唱えました。

 この分類法により、その国や地域の「言語・知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性」などの特徴を掴むことができます。

 

 私は、「ハイコンテクスト文化」のことを「察しの文化」と呼んでいます。

 また、「ローコンテクスト文化」のことを「言葉の文化」と呼んでいます。

 

 まず、「察しの文化」!

 察しの文化は、日本そのものです。

 伝える努力やスキルがなくても、お互いの意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境のことです。

「沈黙は金」

「一を聞いて十を知る」

「忖度」

 

 日本では、共通の慣習や価値観で気持ちが通じ合う度合いが高いといわれています。

 言い換えれば、会話が弾まなくても、相手の言わんとしていることがつかめてしまうのです。

 すなわち「察しに依存することが多い」ということになります。


 このことから、日本人は、「話す能力よりも聞く能力が高い」ことがわかります。

 

 話が変わりますが、新型コロナ問題で、外国のように感染が大きく広がらなかった理由は、政府の対応が良かったからでしょうか?


 私は、これについては、多くを語りませんが、察しの文化が大きく貢献したと考えています。

 

 次に、「言葉の文化」!

 あくまで言語によりコミュニケーションを図る文化です。


 言葉の文化圏の人は、「察し」に頼った意思疎通が不得手です。

 言葉の文化圏では、言語に対し高い価値を示します。

 論理的思考力、表現力、説明能力、ディベート力、説得力、交渉力などが重要視されることになります。


 言葉の文化圏では、訴訟が多いようです。

 

 地球儀的に「察しの文化圏」と「言葉の文化圏」を見れば、日本が東の端の島国で世界で一番の「察しの文化国」です。

 日本から西に行けば行くほど「言葉の文化圏」になります。


 忘れていけないのは、新大陸です。新大陸の代表は、アメリカです。

 他民族の集まり故にどうしても、「言葉の文化圏」になります。

 

 また、グローバル企業は、多くの民族の方が働いています。

 日本の企業であっても「言葉の文化」が主流になっています。

 

・・・

 

 私は、研究者・設計者そしてコンストラクション・マネジャーと同じ建築分野の中で年齢とともに仕事が変わってきました。


 建築設計は、28歳から50歳までの仕事でした。

 コンストラクション・マネジャーは、38歳から現在まで続いています。

 

 建築業界を見渡せば、日本独特の慣習があります。

 私から見れば、日本の請負契約ほど曖昧で危険なものはありません。

 

 しかし、これがまかり通っているのは、建築業界が正しく「察しの文化」そのものであるということです。


 日本の建設会社が海外に進出して痛い目に合っていますが、私は、その原因が「察しの文化」が「言葉の文化」にしてやられていると思っています。

 

 私は、「CM方式の担い手」として、コンストラクション・マネジャーという仕事を長年続けています。


 CM方式は、アメリカが発祥の建設マネジメント方式です。

 

 簡単にいえば、建築の発注者の業務を支援するのがコンストラクション・マネジャーの仕事です。


 このCM方式の発祥は、アメリカですから、「言葉の文化圏」の発想から生まれたものです。

 そうなると、私の仕事も「言葉の文化」になります。


 これで私は、良いと考えています。

 

「察しの文化圏」での契約では、下記の特徴からトラブルに巻き込まれる場合があります。

 

「曖昧な表現を好む」

「多く話さない」

「論理的飛躍が許される」

「質疑応答の直接性を重要視しない」

 

 CM方式の仕事で私が心がけていること。

 

「直接的で解りやすい表現」

「単純でシンプルな理論」

「明示的な表現」

「寡黙は評価しない」

「常に論理的である」

「質疑応答では直接的に答える」