地震は、日本ではどこにいても逃げることのできない災害です。
一月元旦に襲った能登半島地震では、多くの木造住宅が倒壊しました。
地盤の違いが被害の違いとなりました。
液状化対策や基礎に対する配慮が必要不可欠です。
このブロクでは、基礎構造の一つの解である杭ついて。
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私が所属していた会社では、かつて「沿線の丘陵地を造成し、新駅をつくり、沿線人口を増やす」という一つの大きなビジネスモデルがありました。
現在では、適当な丘陵地が無くなり、また、少子高齢化が相まってこのビジネスモデルも崩壊しました。
丘陵地の造成ですから、完成した宅地には、「切土」と「盛土」がどうしても出てしまいます。
特に、1枚の宅地に切土と盛土の境界線があるものは要注意です。
山を切土した宅地は、充分な地耐力がありますが、盛土の場合は、大手の不動産会社の造成とはいえ、軟弱な地盤がほとんどです。
入社当時、ある住宅地で不等沈下してしまった建売住宅がありました。
先輩から、調査を手伝うように言われ、現地に赴くと、床の傾斜と鴨居の傾斜で平衡感覚が狂い、気分が悪くなるほどでした。
欠陥住宅の調査でビー玉やパチンコ玉を転がすということがありますが、それどころの話ではありませんでした。
それ以後、建築前に宅地の地耐力調査を行うようになりました。
また、造成時の切盛図をチェックするようになりました。
昔から、軟弱地盤では、「地形」が行われてきました。
現在では、地盤改良したり、小口径鋼管杭を採用することが多いようです。
その当時、造成の部署に事前に地盤改良を申し入れした住宅地もありましたが、建築で対処することが殆どでした。
私は、1980年ごろから小口径鋼管杭を採用しました。
小口径鋼管杭は、木造3階建てまでなら使用できる支持杭工法です。
現在では、戸建て住宅の杭基礎は普通になりましたが、その当時に鋼管杭を使うには勇気が要りました。
私は、他の担当者も使えるように「小口径鋼管杭工事仕様書」を作成しました。
小口径鋼管杭は、軟弱地盤の層が厚く、深部に支持層が確認される地盤に適した工法です。
いろいろな土質に対応可能で、既存の擁壁に影響のない工法です。
その当時、現在のように「回転圧入」という鋼管を地中に挿入する機械を持っている杭業者が少なく、当初は、ハンマーによる打撃杭打機を使用していました。
小口径鋼管杭は、荷重、施工方法、土質、支持層、杭長などからサイズを決めます。
外径は、101.6mm/114.3mm/139.8mm/165.2mmの中から決めますが、木造2階建て程度であれば、101.6mmで大丈夫です。
心配なのは、腐食ですが、鋼管杭の内面は殆ど腐食が起こらず、腐食代(シロ)は、外面のみを考慮すれば良い事が認められています。
その腐食代は、100年間で2mmで充分です。(日本建築学会)
鋼管杭は、杭頭を基礎コンクリートに抱き込むように鉄筋で基礎と結合させます。
杭と基礎が一体化することで地震や台風などの横揺れにも強くなります。
小口径鋼管杭にも短所があります。
土中に大きな石などが多く混入していると施工が困難になってしまいます。
障害物などで杭が高止まりした時は、近くに増し杭を打ち込みますが、支持力のバランスが悪くなる場合があるので注意が必要です。