マンションの劣化状況は、新築時の施工状況、場所などによって異なります。また、建物の部位や材料、工法によっても異なります。それらを正確に把握するためには、専門家による劣化診断が必要です。

 

 劣化診断は目的によって実施する範囲や内容が異なります。当然、コストも劣化診断の範囲や内容により異なります。ですからその目的を明らかにすることが重要となります。

無償で劣化診断を行うサービスがあるようですが、タダほどこわいものはありません。

 

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 劣化診断・調査には、三つの目的があります。

 

1.計画修繕工事などを実施するため

 

 大規模修繕などの計画修繕工事を実施する前提で行う劣化診断です。実際に工事を行う項目や新たな修繕部位を突き止めるために実施するものです。また、工事の実施時期を判断するためのものという認識も重要です。

 

 問題点を客観的に把握して判断します。基本的には、物理的劣化を把握するために行います。実施のタイミングは、予定している計画修繕工事の1~2年前に実施し、工事の時期を判断します。

 

2.長期修繕計画を作成・更新するため

 

 長期修繕計画の各工事項目の実施時期や予算などを大まかに把握するために実施します。

 

 長期修繕計画は、一般的に30年間の計画を作成しますので、物理的劣化だけではなく、機能的劣化や社会的劣化も考慮する必要があります。

 

 ユニバーサルデザインなどを考慮して、改良すべき建築部位を把握したり、設備機器の機能的劣化や社会的劣化を考慮して調査を行います。

 

 長期修繕計画を新たに作成する場合には、劣化診断を策定前に行います。長期修繕計画は5年程度ごとに更新することが推奨されていますので、更新する場合は更新前に行います。

 

 ところで、私は、60年間の長期修繕計画を推奨しています。一部の管理会社がやっと取り組みはじめました。

 

3.不具合の原因を探るため

 

 建物や設備機器に不具合が発生した場合に行う劣化診断です。不具合の原因や影響範囲、対策方法などを調査します。不具合が発生したらすぐに行う必要があります。