私の住宅設計の始まりは、三重県です。
三重県名張市の近鉄電車の桔梗が丘駅前に広がる巨大な住宅地です。
住宅地開発は、なだらかな丘陵地を開発するのが一般的に行われています。
必然として道路は、水平ではなく、なだらかな坂道が多くなります。
その坂道を前面道路とする宅地は、水平に造成されますから、道路と宅地には段差ができます。
造成当初には、この段差に法面が施され、草の種子を吹き付け、生えてくる草の根で法面の保護を行います。
桔梗が丘も同様で、当初は家を建てた後、道路から宅地に上がる階段と門柱・門扉を取り付け、法面はそのままで、貝塚伊吹(カイズカイブキ)の生垣だけというのが多かったようです。
購入者が後から石積みなどの擁壁(ヨウヘキ)をされていました。
桔梗が丘の次は、奈良県生駒市や奈良市でした。
高級感を出すために法面のままではなく、外構を完璧にして擁壁も施しました。
擁壁には、いろいろな工法があります。
代表的なものは、コンクリート重力擁壁や二次製品のL型擁壁・擁壁用ブロック積みによるものです。
昔からなじみ深い擁壁は、「石積み」。
私は、石積みが好きで多く採用しました。
古くから各地でいろいろな石でいろいろな積み方があるようです。
私が気に入っている石積みについて述べてみたいと思います。
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現在では、石積みは激減しているようですが、1980年当時では、まだまだ石積みの外構が多く採用されていました。
私は、石積みが和の庭だけでなく、洋の庭にも十分に耐えうる演出ができると思います。
熊本地震で熊本城の石積みがくずれましたが、
「石積みって安全?」
と思われるかもしれません。
石が積み上げられているだけなので、崩れやすそうに見えます。
しかし、プロの石屋さんが積んだものは、充分大丈夫と思います。
なにせ、石積みは、全世界にある技術ですから…。
実際に、お城やピラミッドは今でも当時のままの形を保っています。
熊本地震が激甚であったということでしょう。
コンクリートでは、手入れをしないと美感に問題がありますが、石積みは、年月の経過とともに風情が増し、豊かな風合いの庭に変化していきます。
私がよく使った積み方は、崩れ石積み。
崩れ石積みの良し悪しは、角が肝心です! 「石屋は角で泣く」という格言があるようです。
石屋さんの、一番の腕の見せ所は、やはり石の角の力を出せるかです。
私が使いたかった石種は、奈良県の生駒石が有名でしたが、値段が高く使うことができませんでした。
使えた石は、丹波石、吉野石、木津川石などですが、風情が違う味わいが出て悦に入ったものです…。