価格開示方式(RM方式)の思想の原点は、現在の日本の請負方式には、その概念のなかったオープンブック方式を採用することにあります。

オープンブック方式、即ち、原価を開示する方式を採用することによって、今までの請負方式からすれば、革命的・革新的な発想となります。

日本の建設業は、民法に規定がある「請負契約」が基本です。

マンション大規模修繕工事も同様に行われてきました。

建設業法には、

「建設業は建設工事の完成を請け負う営業をすること」

「建設業者は建設業許可を受けて建設業を営む者」

と書かれています。

キーワードは「請負」です。

 

それでは、「請負」とはどういうことなのでしょうか?

民法を要約すれば、

「当事者の一方が相手方に対し仕事の完成を約し、他方がこの仕事の完成に対する報酬を支払うことを約すること」

となります。

すなわち、仕事の「完成」に対して報酬を支払うのです。

この「完成」に対してお金を支払う「請負契約」は、厳密に言えば、工事費の総額を決め、その中身を開示する必要がない契約形態なのです。

 

そうである以上、日本の建設産業が発注者に対して、内容の開示をせずに不透明な体質のままであるということは当然であるわけです。

これが、硬直した建設業の一つの要因となってしまっていたのです。

談合もこの体質から発生したと言っても過言ではないでしょう。

 

請負契約では、建設業者に瑕疵担保責任という無過失責任が覆い被さります。

言い換えれば、発注者は、建設業者が負うたいへん大きなこのリスク費用を負担していることになります。

建設業者から見れば、建物を完成させ、大きなリスクを背負い込み、一定の対価を受けます。

 

完成すればよいわけですから、工事途中の過程はどうでもよい、リスクを背負って建物を完成させれば工事費の中身はブラックボックスでもよいことになります。

発注者から見れば、建設業者が大きなリスクを請けてくれ、お金を払えば完成してくれるのですから、一義的には安心を得ることができます。

日本の建設業は、ハイリスク・ハイリターンな産業です。

発注者から見れば、何かあれば、建設業者がすべてを保証してくれると思うことでしょう。

反対に、不必要にお金を払いすぎているのではと思うかもしれません。

いずれにしても、この図式を一般の方々が理解しているかどうかは疑問です。

 

日本のゼネコンが海外で利益が出せない(赤字になる)のは、日本的請負から脱皮できず、大きなリスクを背負うことを当然視してしまっているからです。

発注者も完成物の仕上がりが、契約内容や設計図書と少しぐらい違っていても――当初設計よりも良くなっていれば、完成さえすれば――日本では許されているようです。

このような曖昧さが海外では、契約行為に長けた海外発注者の餌食になっています。

日本でも「建設業」イコール「請負」ではない業態が求められます。

ローリスク・ローリターンも視野に入れる必要があります。