高齢化社会から人生100年時代の到来が視野に入ってきました。


 私たちは、その準備をする必要があるかもしれません。


 私の妻の母は、104歳の人生を全うしました。


 住宅では、「100年住宅」がキーワードの一つになっています。


 100年住宅に一番近い存在がマンションです。


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 100年住宅を実現するための要素は、「建物の構造」「維持保全」「災害」の3つです。


 

 今回は、マンションの鉄筋コンクリート造の構造について。

 

▪コンクリートの加水問題

 

 コンクリートは、高強度であればあるほど長寿命になります。


 逆に言えば、水の使用量が少なくすれば長寿命になります。


 高強度コンクリートをつくろうとすれば、加える水を少なくしなければなりません。


 水分が少ないコンクリートは、

「固練り」

と言われ、昔からコンクリートを型枠に流し込むのに、たいへんな労力が必要でした。


 それでも、コンクリートを型枠に流し込むコンクリートポンプ車が普及する前までは、一輪車でコンクリートを運び、型枠にコンクリートを打設していましたので、固練りのコンクリートでも健全な打設が行われていました。

 

 コンクリートポンプ車が普及しはじめてコンクリート打設が簡単になりました。


 しかし、初期は、まだまだ性能が悪く、コンクリート圧送時に配管が詰まることがあり、しかたなく現場で水を混ぜることが多くあったと聞いています。

 

 現在では、水の代わりに流動化剤や高性能流動化剤という添加剤を生コンクリート作成時に混入して、柔らかな生コンクリートで高強度になるようにして、施工性をよくしています。

 

 この流動化剤は、高価なのです。

 

 コストダウンで流動化剤を少なくして固練りコンクリートを使用するという提案が過去にありました。


 この場合、現場ではたいへんな労力ですから、施工性のために加水しないと、時間内にコンクリートを打設できないことになってしまいます。


 この段階でコンクリート強度が落ちます。


 まず、これが一番大きな問題でした。


 強度が落ちると、地震時のリスクが増します。


 また、中性化しやすくなり、建物の物理的寿命が短くなりますから、加水は本当に建物によくありません。


 コンクリートの加水問題は、最悪な行為です。

 

▪施工精度

 

 鉄筋コンクリートで鉄筋が錆びないのはコンクリートがアルカリ性であるからです。


 アルカリ性であっても鉄筋がむき出しになっていれば効果はありません。


 鉄筋を覆うコンクリートの厚さ(かぶり厚さ)が適正以上ないと長寿命になりません。

 

 構造躯体の施工精度で要求されるのは、鉄筋量や配置は当然として、まずかぶり厚さが設計通りか、躯体の外形寸法が設計通りか、欠陥のない健全なコンクリートが打設できているかです。

 

 かぶり厚さの不足は深刻です。


 2回目の大規模修繕時には、鉄筋が錆び、コンクリートが爆裂(本当にコンクリートの一部が爆発したように見えます)を起こしている事例が多く見られます。

 

 多額の補修費がかかりますし、長寿命とは言えない建物になります。


 所有者から見ると、もうだめかとの意識に駆られてしまいます。

 

 躯体の外形寸法の精度が悪かったら、あとから設計上の躯体線(コンクリートの外側)までモルタルを塗り付けるか、コンクリートをはつる(削る)ことになります。


 モルタルを塗れば、剥離・剥落の原因となります。


 コンクリートをはつればかぶり厚さ不足の原因になります。

 

 日本人は、でき上がりの線の美しさを極端に重要視します。


 これがあとからの補修を助長している理由の1つです。

 

 また、コンクリート壁が薄くなった、柱が小さくなったとすると、所定の断面が確保できず、建物そのものが弱くなるということになります。


 欠陥のない健全なコンクリートの打設はたいへん重要です。

 

 コンクリートの欠陥には、セメント分が混ざっていない豆板や、コンクリート打設の時間差で生じるコールドジョイントがありますが、補修をしっかり行わないと後々禍根を残すことになります。

 

 施工精度は、長い目で見ると、建物の良し悪しに大きな影響を及ぼします。