建物の寿命を決める要素は、「建物の構造」「維持保全」「災害」の3つです。

 

 今回は、建物の構造の主原料の一つの「コンクリート」について取り上げます。

 

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※ コンクリート強度の高いマンションは長寿命

 

 鉄筋コンクリートは、鉄筋とコンクリートのお互いの長所がお互いの短所を補いあって、強固な躯体を構成します。

 

 鉄筋は錆びますが、引張り力に対して強く、コンクリートは引張り力には弱いのですが圧縮力に対しては強く、アルカリ性で鉄筋を錆びから守ります。

 

 コンクリートは、コンクリート強度が高いほど寿命が長いと言われています。

 

 理由は、コンクリート強度が高いほどアルカリ性の保持力が強いからです。

 

 コンクリートは、アルカリ性ですから、年を経ると酸素と化学反応を起こして中性になります。

 

 この現象を中性化といいます。

 

 コンクリート強度が高ければ高いほど密なコンクリートということになりますので、中性化が進行しにくいということになっています。

 

 つまり、高強度コンクリートを使うタワーマンションは、鉄筋が錆びにくいという理由で長持ちするということです。

 

 逆に言えば、低層の建物でも、耐震性能を2割増し、というような設計をすれば、高強度コンクリートを使いますから、耐震性能だけではなく、中性化抑制という点でも長寿命になります。

 

 加えて、鉄筋とコンクリート表面の距離を『かぶり厚さ』といいます。

 

 かぶり厚さが大きければ大きいほど、中性化したコンクリートが鉄筋に届くまでの年月が長くなります。

 

 その結果、建物は長寿命になります。

 

 かぶり厚さが同じなら、高強度コンクリートを使っている建物は、鉄筋がより錆びにくく、長寿命マンションになるということです。

 

※コンクリートの加水問題

 

 コンクリートは、高強度であればあるほど水の使用量が少なくなります。

 

 高強度コンクリートをつくろうとすれば、加える水を少なくしなければなりません。

 

 水分が少ないコンクリートは、『固練り』と言われ、昔からコンクリートを型枠に流し込むのに、たいへんな労力が必要でした。

 

 コンクリートを型枠に流し込むポンプ車が普及する前までは、一輪車でコンクリートを運び、型枠にコンクリートを打設していました。

 

 この頃は、固練りのコンクリートでも健全な打設が行われていました。

 

 その後、1965年前後にコンクリートポンプ車が普及しはじめて、コンクリート打設が簡単になりました。

 

 しかし、当時はまだまだ性能が悪く、コンクリート圧送時に配管が詰まることがあり、しかたなく現場で水を混ぜることが多くあったと聞いています。

 

 現在では、水の代わりに流動化剤や高性能流動化剤という水ではない添加剤を生コンクリート作成時に混入して、柔らかな生コンクリートで高強度になるようにして、施工性をよくしています。

 

 しかし、この流動化剤は値段が高価なのです。

 

 工事費のコストダウンの提案として、流動化剤を少なくして固練りコンクリートを使用するということがあります。

 

 この場合、現場ではたいへんな労力ですから、施工性のために加水しないと、時間内にコンクリートを打設できないことになってしまいます。

 

 この段階でコンクリート強度が落ちます。

 

 まずこれが一番大きな問題です。

 

 強度が落ちると、地震時のリスクが増します。

 

 また、中性化しやすくなり、建物の物理的寿命が短くなりますから、加水は本当に建物によくありません。

 

 コンクリートの加水問題は、たいへん重要な犯罪行為です。