マンションの将来を考える上で、修繕積立金問題は、深刻です。

 

マンションを終の棲家にしようと考えている人が増えました。

 

マンション住民の高齢化が進んできました。

 

私が住んでいるマンションもご多分に洩れず同様です。

 

分譲時の長期修繕計画は、契約時に支払う修繕積立一時金を参入し、数年ごとに値上げを行い、かつ、不足の場合には一時金が参入されている計画になっているものが多いのが実情です。

 

新築時の長期修繕計画では、将来破綻マンションの道を歩みます。

 

やはり、マンションの将来に対して、区分所有者が真剣に議論をする必要があります。

 

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新築時の長期修繕計画は、分譲主のアリバイ作りでしかありません。

 

住民一人一人がマンションを責任をもって守らなければなりません。

 

将来、建て替えをすれば良いではないか! と思われることでしょう。

しかし、建て替えの合意形成はたいへんです。

 

 

 

鉄筋コンクリートの建物は、手入れをよくすれば長持ちします。

 

しかし、マンションも年を経てからいろいろな問題が噴出します。

 

 

 その一つは『耐震性能』です。

 現在の耐震基準は、1981年の建築基準法改正により、『新耐震』として生まれ変わりました。

 

 随分前の改正ですが、まだ、新耐震と呼ばれています。

 

 1978年の宮城県沖地震などでそれまでの耐震基準の弱点が明らかになり、それを修正し、改めたものです。

 

 阪神・淡路大震災でも、倒壊した新耐震のマンションはほとんどなかったそうです。

 実際、築年がこれ以前か以後かでは、耐震性にはかなりの差があります。

 

 1981年以前に建ったマンションには『不安』が残っています。

 

 2つ目は、「陳腐化」です。

 よく言われるのは『設備』と『広さ』の問題です。

 

 時代とともに電化製品、風呂、キッチン等は変化しています。

 

 30数年前と今とではまったく違ってしまいました。

 電気やガスの使用量もまったく違います。

 

 太平洋戦争終戦後、日本の集合住宅は、『住宅不足解消』の中で、『安く大量に』つくる使命を帯びていました。

 

 その中でもマンションは、『持ち家思考』の解決策として大きな役割を担っていました。

 

 無駄なくつくることに設計者は知恵を絞りました。

 特に公営住宅がモデルとなりました。

 

 その結果、『経済的』で『使い勝手のいい』マンションが登場しました。

 

 しかし、マイホームも時代とともに、家族構成の変化や新築マンションとの比較では、古いマンションは使い勝手や住み心地に満足できなくなってきました。

 

 賃貸の公団住宅は、今はURの賃貸住宅となり、建て替え真っ盛りです。

 

 分譲マンションは、そうはいきません。

 

 建て替えがあまり進まないので、リフォームしようとしても必要な『面積』が残っていないのです。

 新築時には決して『粗悪品』であったわけではありません。

 

 構造はまだまだ丈夫なのに、「時代に合った住宅」への変身を果たせなくなってしまったのです。

 

 また、新耐震以降、マンション設計の考え方も大きく変わってきました。

 

 家族構成に合わせたライフスタイルの中で『余裕という概念が登場しました。

 

量から質』への転換です。

 

 50㎡が中心だったマンションが65~80㎡中心になり、階高も大きく変化していきました。

 水廻りの設計も多様になりました。

 これに伴って専有部分には、「リフォームできる余裕」も生まれてきたのです。

 

 構造の安全と余裕設計は、『新耐震』への移行と時期を同じくしています。

 

 新耐震からの建物では『建替え』を第一に考えなくてもよくなったのです。

 

 現在は、まだ新しいマンションでも築30年超ともなれば、今では計り知れないことが起こるかもしれません。

 

 その時には、あなたのマンションも『若返り』が必要です。

 

 あなたの「先進的なマンション」も時代とともにめまぐるしく変化してきた結果です。

 

 タワマン、床暖房、24時間換気、IHヒーター、食器洗浄機、ディスポーザー、浄水器、ブロードバンド、安全監視、オートロック、TVインターホン、防犯マンション、免震・制震構造……。

 

いまは「先進の装備」ですが、やがて普通のことになってくるでしょう。

 

『標準』がどんどん変化していくのです。

新築だけではなく、中古にも同じ標準が求められます。

 

 これらの中には、専有部分の機器を新型に取り替えれば改造できるものもあります。

 

 しかし、電気配線の容量アップや光ケーブルの敷設、新たな施設の設置など共用部分の工事が必要なものが増えています。

 

『時代遅れ』にならないためには、マンション全体での取り組みが必要な時代になってきたのです。

 

『時代にあった』生活ができる住まいであり続けるためには、マンション全体の改良を修繕に合わせて行っていくことが必要です。

 

「老いを防ぐ」こと、工事だけでなく、新しいマンションに引けをとらない!

「若返り」、工事も必要なのです!

 

 はじめてのマンション大規模修繕から意識することが大切です。

 

 では、なぜ、若返りが必要なのか、時代遅れがなぜよくないのでしょうか? 

 

「ここが終の棲家だ。時代遅れでも関係ない」という反論もあることでしょう。

 

 しかし、実は、『時代遅れ』になると『陳腐化の進行』に繋がるのです。

 

 例えば――、「手入れが悪くなります」 陳腐化と積立金の額は密接な関係があります。

 

 新車は十分に整備をしても、オンボロ車にはお金をかけないのと同じで、陳腐化するとと、計画修繕に必要な資金が集まりにくくなります。

 

「引越しが増えます」

「計画修繕や改良が不十分になります」

「マンションに不満が溢れます」

 

 結果、賃貸化率が高くなります。

 悪循環に陥り、陳腐化がさらに加速します。

 

 資金不足で建物の手入れすら十分にできない状況が予見されるのです。

 

 このようなことから、長期修繕計画は、修繕だけではなく、改良も含めた改修として考える必要があります。

 

『物理的寿命」だけではなく、『機能的寿命』や『社会的寿命』の重要性を認識しなければなりません。

 改良は、建物を維持していくために不可欠な再投資と考えるべきです。

 

 人に譬えれば、『からだの若さを保つ』だけでなく『精神的な若さを保つ』ことが必要なのと同じです。

 

「老いてなお、パソコンを楽しむ」ことが必要なのです。

 

 しかし、何でもかんでも新築マンションに合わせていくことは無理ですし、そこまでの必要もありません。