何年か前に、あるマンションの相談を受けました。
管理会社から
「そろそろ大規模修繕工事です」
と見積書が提出されたそうです。
管理組合からの相談は、
「管理会社の見積金額が、今ある修繕積立金よりかなり多いのです。お金が足らないのでどうすればよいでしょうか?」
という内容です。
・・・
私は、大規模修繕の相談を受けるときは必ず
「長期修繕計画を用意しておいてください。できれば修繕履歴もお願いします」
と事前にいいます。
見せていただいた長期修繕計画は、国土交通省の標準様式で2016年に作成されていました。
それを見ると2018年の大規模修繕工事の予定になっています。
18年では、3年分の修繕積立金額分足らない計算です。
18年は、築22年目です?
しかし、書類だけを見ると2018年は1回目から12年経過の年です。
私は、そこで
「1回目の大規模修繕工事の資料を見せてください」
とお願いしました。
その資料を見た私は、驚きました。
「え! 新築から10年もたたないのに!」
10年を3か月残して、大規模修繕工事が完了していたのです。
まだ、10年の新築時の瑕疵担保責任期間内です。
どうしてこの時期だったのか、理由をお聞きしたのですが、はっきりしません。
「えーと、防水の保証が……」
どうも、10年の防水保証が切れる前に大規模修繕工事を発注されたようです。
「これは、異常ですね!」
と申し上げました。
「法律で大規模修繕工事を行わないといけないのでしょう? 管理会社がそう言ってました」
と聞かれました。
「大規模修繕工事をいつしなければならないという法律はありません」
「国土交通省はガイドラインを示しているだけで、指針、目安です」
「タイル張りマンションなので、建築基準法の特定建築物定期調査というのがあり、10毎にタイルの全面打診は義務付けられていますが、猶予期間があります」
と説明しました。
1回目の契約書を見せていただきました。
管理会社が元請会社になっていて、下請の「施工会社」が1社、記載されています。
いわゆる、管理会社のアットリスクCM方式です。
管理会社主導で行われた大規模修繕工事です。
私は、あきれました。
この管理会社は、大手の不動産会社の子会社です。
瑕疵(かし)隠しのために大規模修繕工事を急がせたのかもしれません!
時効かもしれませんが、このような詐欺的行為は許されません!
次に、劣化診断を見せていただきました。
「?」
「バルコニーの調査は?」
「していません。バルコニーの調査は別料金と言われました」
「この劣化診断は、管理会社が無料で行いましたか?」
「お金を払いました」
このような、やり取りをおこなった後で、最後に、おっしゃいました。
「私たちは素人なので何もわかりません。よろしくお願いします」
このような素人の集まりの管理組合に対して、適切なアドバイスをして、良好なマンションに導くのが管理会社の仕事のはずです。
これでは、修繕積立金が無くなってしまいます。
破たんマンション予備軍です。
破たんマンションにならないためには、これからが肝心です。
管理会社の見極めが必要です。