秋に花を咲かせる草を総じて「秋草」と呼び、そうした花が野に咲き乱れる風景を「花野」と表現するように、秋はさまざまな草花や景色との出会いに胸が躍ります。


山上憶良の歌に詠まれ、秋草の代表とされる女郎花や尾花(薄)などは、まさに日本の秋の野を連想させる情緒的な趣がありますね。
紅葉や実ものが力強く華やかな錦秋に、秋草はどこかもの悲しく儚げで、しっとりと優しい印象を受けます。
春の桜がそうであるように、日本人には「もののあはれ」的な、美しさと同時に儚さや哀愁、しんみりとした風情を愛する独特の美的感覚があるのでしょうか。


酒井抱一筆≪夏秋草図屏風≫は秋の草花が持つ静謐とした美しさ、抒情を見事に表現しています。
この作品は、抱一が師と仰ぎ、私淑した尾形光琳筆≪風神雷神図屏風≫の裏側に描かれたものでした。
作品保護のため、現在は別々の屏風となっていますが、重ね合わせてみましょう。



この続きは本誌にて。
(「小原流挿花」のご購読は、下記よりお申込みください。)

小原流教材カタログ「花もあ」