ピアノ君さようなら…
ピアノがベェーをした…
え、うそ
…夢か
今週の水曜日に業者の人が
ピアノを引き取りに来る
椅子は残しておきたかったが
椅子を見ていると心が痛むから
手放すことにした…
食事をして家を出ると足が重く
今までになく駅までの道のりが
長く感じる
…
こんな、長い一日が終わり
家に帰り…食事
お疲れ様…
うん…
今度は私が君をなぐさめるばんね
うん、ありがとう
私も寂しいの…
君がピアノを弾いている姿が見れないし
ピアノの音も聞けないし
うん…
人が大切なものを無くしたとき
何を思うだろう…
寂しいとか悲しいとか思うのは勿論だが
何が本当に大切なのか
無くしてみると良く分かる
さあさあ、みんな集まって
今日は私の美声を聞かせるわ
カラオケもないしマイクもないよ
そんなものいらないわ
きみの歌を聞いているとまるで子守唄のようだ
むかし、幼い頃母に抱かれ聞いたような
ピアノ君さようなら…そして
ピアノ君お帰りなさい
と言える日が来るまで待とう
これから毎日、私の美声で
君を慰めてあげるね
えー
その、えーはなに不満があるの
いえ、その、うれしい
でも毎日?
そ、毎日よ
うん…
毎日…かァ−
