「現在代行形」

村雲菜月「現在代行形」(『群像』2026年9月号所収)を読みました。
この小説には、食品メーカーに入社して広報部に配属されて3年目の終わりに品質管理部に異動となり苛立ちを抱えながら日々を過ごしていた主人公の影山綾実が、会社を辞めてフリーのイラストレーターとなった友人の(‘しいなしるし’と言うペンネームで活動している)椎名の(メールへの回答や担当者との打ち合わせへの出席等の)代役を(椎名への妬みから綾実自身が起こした行動が起点となってはいるのですが)折につけこなしていくことで、自分自身に気づき周囲の評価が変わっていく様子が書かれているのですが、小説の序盤では職場や日常生活で割と傲慢な態度を取っていたのに、椎名の代役を重ねるにつれて自分自身への気づきに基づき態度を変えていく事で周囲の評価が変わり自己肯定感が高まる一方、本来の自分が分から亡くなってしまうと言う展開が綾実の姉も登場して会話する場面もある等エピソードや状況が細かく書かれているためでしょうか、面白いのは間違いないものの読んでいる間中ずっとこの小説が僕に反省を促している様な気がしました。
ああ、他人に求められる人間にならないといけないと言う事か…。
また、小説の序盤での(半ば傲慢と形容しても許されるだろう)自信満々な綾実と中盤以降の綾実の意識や感覚の描写の違いもかなり衝撃を受けましたが、椎名と言う人間にも(ある種の)凄さと不気味さを感じました。