「雷の夜に、ぼくは」 | F9の雑記帳

「雷の夜に、ぼくは」



 長野まゆみ「雷の夜に、ぼくは」(『群像』2026年8月号所収)を読みました。
 この小説には、三十年前に一度会ったきりの男に出会ってしまった主人公の十四歳の夏のある出来事が書かれているのですが、その出来事に関して中心人物である一本木の存在のミステリアスさ加減とある種の不気味さが、雷雨や油絵の具の香りや動物たちの墓標といった細かな設定の効果もあってか、小説を読み進めるにつれて増していくのが読んでいて堪らなかったです。
 そして、小説の終盤、主人公は直接手を出していないにしても、まさか一人の人間の運命を決定づけてしまうなんて予想していなかったですし、一本木が最後どうなったのかを書かないで冒頭の場面に繋げるという展開は(正直)個人的には意外で綺麗だなと思いました。