『ピアノ・レッスン』 | F9の雑記帳

『ピアノ・レッスン』



 アリス・マンロー『ピアノ・レッスン』(小竹由美子訳、新潮社)を読みました。
 アリス・マンローの本はカバーの作家の紹介文に登場する「チェーホフの正統な後継者」や「『短篇小説の女王』」と言った文句に惹かれ(実にミーハーですが)、何冊か近所の図書館で借りて読んでみたものの、個人的に一篇の小説も読み終えられなかったと言う恥ずかしい状況が続いていたのですが、この本はデビュー作品集と言う事だったので「今回は読み切りたい」と少し気合いを入れて読み始め、何日か読み進められない日を挟みつつも読み終える事が出来て(個人的に少し)安心しました。
 そして、この本にはカナダの田舎町を舞台に平凡な出来事を送る人々の暮らしに光を当てている15篇の小説が収められていて、完結はしているもののその後の展開を待っていると感じられるものが多かった様に感じるのですが、薬の販売員である父親の行商に同行した主人公が父親の別の姿を目撃する「ウォーカー・ブラザース・カウボーイ」と景観を気にして小屋に住む老婆を立ち退かせようとする人々に対する主人公の姿を書いている「輝く家々」、父親が知り合いの未婚の女性に紹介しようとしている男性の姿と日々の生活を主人公の視点から書いている「イメージ」と言う最初の3篇の小説の並びと内容がまず衝撃的でした。
 更に、失恋を引きずり酒にまつわるトラブルを引き起こした主人公と失恋の相手について書かれている「一服の薬」、主人公の女の子が弟の世話に忙しい女の子との関係の変化について書かれている「蝶の日」、ややしつけに厳しい祖母と一緒に暮らす主人公と言う関係がある男性の登場により崩壊してしまう「海岸への旅」、主人公が母親が直前の様子を知るとともに姉の知らなかった一面を知る事になる「ユトレヒト講和条約」、落ちぶれたピアノ教師の発表会で奇跡的な出来事が起きる「ピアノ・レッスン」も衝撃を受けると同時に印象に残りました。