『クレムスの曲がりくねる時間』
この本には、「管理人」「音楽のレッスン」「クレムスの曲がりくねる時間」「文学賞」「ロサンドラ渓谷――外・日中」と言うトリエステを舞台とした5篇の短篇小説が収められているのですが、どの小説も長くない上に散文詩の気配が感じられて良かったです。
また、この本に収められた小説の中では、妻に先立たれ、所有していた複数の会社の大部分を売却した実業家のジュゼッペが、息子夫婦たちに内緒でしているアパートの管理人の仕事について書かれている「管理人」に散文詩の気配を色濃く感じて、個人的には一番強く印象に残りました。
また、主人公が学生時代高嶺の花だったかつて憧れの女性S・ノーリと電話した時の会話から主人公が独自の見解を語る「クレムスの曲がりくねる時間」も、時間が直線的ではなく、原因や結果が時空間から逸脱する事もあるという見解が独特だなと感じはしたものの、(「管理人」よりはやや弱いですが)個人的には印象に残りました。
あと、いくつかの小説で小説の中の時間の流れ方がおかしくないかと読んでいて思ったのですが、巻末の「訳者あとがき」を読んで理解できました。
ああ、それぞれの小説の執筆時期及び発表時期にバラツキがあるのですね…。
