「ビスマルキア・ノビリス」 | F9の雑記帳

「ビスマルキア・ノビリス」



 仲白針平「ビスマルキア・ノビリス」(『文學界』2026年5月号所収)を読みました。
 この小説は、“主人公は私立中学校の理科の教師を辞め、約一年前にある地方に移住して園芸店に就職した男性。ある日、深夜にエリノア・Мと名乗る女性からビスマルキア・ノビリス・シルバーの注文メールを受けていた事に気付く。注文物を配達するため、指定された場所に向かうもそこには誰もいない。日を改めて指定された場所に向かっても同じ状況が続く中、主人公はエリノア・Мの正体に興味を持ち始めて…。”と言った展開で進んでいくのですが、あまり出回らない植物を扱う園芸店や(漆灯と言う名前の)漆器の工房の状況や工房主人公の過去や趣味、園芸店でアルバイトをしている酒井と主人公の関係、エリノア・Мが指定していた場所にある建物は市が地域振興のための資料館に使用予定の建物のため関係を持つ事になった市の観光課の男性について等の描写が大雑把すぎでなく詳細すぎない丁度良い上に配置位置も適正な感じで、タイトルを見て「難しい小説じゃないか?」とやや腰が引け気味の状態で読み始めた自分はどこへやら、読み進めるにつれて(内容の濃度が高くなる終盤は特に)かつての勤務先にいた黒猫のクロにまつわる話等の幻想的な要素を含む内容やに惹かれている自分に気づき若干恥ずかしくなりはしたものの、全体として読んでいて面白かったです。
 また、個人的には市の職員が語るエリノア・Мの希望や正体についての仮説の大胆さ(←主人公が風邪を引いたのはこれが原因の一つではないのは間違いないでしょうが…。)と主人公の落下感覚を伴った幻覚の描写、ビスマルキア・ノビリス・シルバー云々は直接の関係がないかつて酒井が保有していた自転車を巡り主人公とエリノア・Мが対峙する事になった最後の場面が強く印象に残りました。