『獲物』

イレーネ・ネミロフスキー『獲物』(芝盛行訳、未知谷)を読みました。
この小説には、主人公ジャン=リュック・ダゲルンの1932年から始まる6年間の物語が、二部構成で書かれています。
個人的には、経済的に困窮していた主人公が銀行家の娘と恋愛関係に陥った事がきっかけとなり、自身の家族の事や周囲の人々に対してほぼ目を向けず、自分の野心を満たすため計算づくで行動した結果、政治家への扉が開きかけた所で終わる第一部があるからこそ、主人公の運命が周囲の状況の変化によって大きく変わり、破滅に向かって突き進んでいく第二部の印象が強烈になり、読んでいる間何度となく身悶えしてしまったり泣きたくなったりしたのだなと思いました。
「自分の中の若さを窒息させちゃあいかんのだ。そいつは仕返しするぞ。」(60頁)と言う(主人公の父親である)心優しいローラン・ダゲルンの言葉を胸にとどめて行動すれば、この物語の結末のようにはならなかったでしょうに…。
また、主人公の妻となり、後に離婚するエディット、第二部の後半に至り主人公が愛を告白し続けることになるマリー・ベランジェと言う二人の女性に対する描写が細かく、幾分圧を感じる文章からの影響ではないのでしょうが、読んでいて凄みを感じました。