「スポンジケーキ・キッチン」

大濱普美子「スポンジケーキ・キッチン」(『文學界』2026年2月号所収)を読みました。
この小説は、”整体師としてリラクゼーション・サロンに勤務する一方、甘い物好きな事もあってパティシエになり将来は自分の店を持ちたいと言う夢を持っている主人公・祐吉。病気治療のため入院していた彼が、退院後サロンでのかつての同僚や客、幼い頃に食べたスポンジケーキに端を発したお菓子作りについて、アパートの部屋をルームシェアしていた高校の同級生との日々、入院生活での印象的な出来事等を思い出しながら、アパートの部屋でケーキを焼いて…“と言った内容なのですが、内容からして全体的に重い雰囲気が漂っていてもおかしくないのにホッコリする箇所が割と多くて、安心はしたものの何だか不思議な感じがしました。
もしかすると、登場人物の名前がカタカナで書かれているのも、小説中に漂う雰囲気を重く感じさせない原因なのかもしれないですね…。
あと、かつてサロンで同僚だったカワムラチハル、サロンで祐吉を指名してくる客のニシノ、アパートの部屋をルームシェアしていた高校で同じクラスだったリュウジ、入院生活の間お世話になったスエヨシカヨコ等の登場人物は魅力的でしたし、彼ら彼女らについての記憶の描写も読んでいて興味深かったですが、幼い頃に知り合ったキリシマサチコを訪ねていって、彼女が住んでいるところで食べたスポンジケーキにまつわる記憶の描写が特に強く印象に残りました。
ああ、スポンジケーキ、美味しそうだなあ…。