「赤いベスト」

内田ミチル「赤いベスト」(『新潮』2025年11月号所収)を読みました。
第57回新潮新人賞受賞作。
この小説は、”主人公は、母がある日行方不明になった過去を持ち、包括支援センターでデイサービスを利用している女性、跡野。地域での人々との付き合いの中で、ある女性の夫が病気で倒れたのをきっかけにある噂がたち、人々の間に恐怖が広がっていき…“と言った内容なのですが、跡野が(デイサービスの職員に対して嘘の家族構成や経歴に関して嘘をつく等)平然と嘘をついたり、疎遠になっていた弟が亡くなった後に彼の家に行き、赤いベストを持ってきたりする謎の行動を取るのに理由が明かされないまま淡々と小説が進むので、いくら読み進めても彼女の行動の目的が何か分からず、彼女の行動から垣間見える冷酷さがそうさせるのでしょうか、腹が立って仕方ありませんでした。
しかし、終盤になって跡野のついた嘘がバレる際の描写や、最後の最後で彼女が過去についた嘘がもたらした結末は読んでいて特に面白く納得させられたので、「読んでいる間の感情の動きは、作者の意図にまんまと乗せられた証拠なのか?」と感じました。
ああ、きっとそうなんでしょうね。してやられました…。