『ある晴れたXデーに』 | F9の雑記帳

『ある晴れたXデーに』



 マリー・ルイーゼ・カシュニッツ『ある晴れたXデーに カシュニッツ短編傑作選』(酒寄進一編訳、東京創元社)を読みました。
 この本に収められている15篇の短篇小説は、以前読んだ『その昔、N市では カシュニッツ短編傑作選』に収められた小説と同様、読み進めるうちに不安が募りあたり構わず叫んでしまいそうになったり、読み終えた後(少しの間ですが)小説と現実との区別がつかなくなったりするものが多かったように感じました。
 そんな中でも、戸締まりを厳重にする妻の態度や夫との会話から、最後まで何も起こらないことが意外だった「雪解け」、日が経つにつれて感覚が麻痺していく中で自己観察を続ける主人公に訪れる結末が衝撃的なの「火中の足」、広告塔に大きな写真が貼られ、新聞で連日報道された、誘拐された少年を見つけた主人公の様子を描いた「幸せでいっぱい」、主人公が世界が滅亡するXデーについて詳細に記す「ある晴れたXデーに」、主人公が旅立ちの日の夢で見た(かなり現実に近いが限りなく現実ではない)光景が描かれている「旅立ち」が印象に残りました。