「オートマタ・シティ」 | F9の雑記帳

「オートマタ・シティ」





 砂川文次「オートマタ・シティ」(『群像』2024年5月号所収)を読みました。
 この小説は、(過去に立ち消えになったはずの)「新東京特別市」計画の調査を命じられた行政監査院のコマツが、上司のフジタとともに奮闘する姿を描いた小説なのですが、途中までの(いくら仕事とは言え)若干白けた感じから、後半にかけて(サスペンス映画の一部のような)手に汗握るような展開になった事(←しかも、登場人物それぞれの仕事上の担当業務ゆえにそうならざるを得ないのが何だか面白かったです…。)も手伝ったのでしょうか、予想よりかなり早いペースで読み終えてしまいました。
 そして、仕事と関係ない場所で会えば良い人だろうけど、職場で会うから一癖あるように見えてしまう登場人物達の中でも、(小説の本筋云々は別にして)「新東京特別市計画」について新聞記事にしたマエダの姿や行動の描写を読み、マスコミはある意味非常に怖いなと思いました。
 まあ、事実よりも自分自身の想像を大切にしているからこその展開なのでしょうが、個人の思い込みや考察、他人から聞いた含みを持たせた(ように思わせてしまう)発言が、本来なら大事になりそうもない事に火をつけてしまうんですね…。
 また、個人的にはコマツの入社同期であるナガサワの配属先が変わった途端に勤務態度が変わる描写も面白かったです。
 しかし、「新東京特別市」計画が息を吹き返したのが、まさかあの人物の仕事の結果だったとは思いませんでした。
 ああ、「仕事は仕事だ。」(307頁)か。重い…。