『文と本と旅と ――上林曉精選随筆集』 | F9の雑記帳

『文と本と旅と ――上林曉精選随筆集』



 上林曉『文と本と旅と ――上林曉精選随筆集』(山本善行編、中公文庫)を読みました。
 この本は昭和34年に五月書房から出版された単行本のタイトルと同じではあるものの内容は異なり、上林曉の随筆が「文」「本」「旅」「酒」「人」に分類されて55篇の随筆が収められているのですが、どの随筆も読んでいて面白く感じたり思わず(文字通り)膝を打ちそうになったり感動したりと心が動かなかった文章はありませんでした。
 そんな中でも、個人的には最後に置かれた「『枯木のある風景』の出来るまで」がこの本に収められた文章の中でもっとも強く印象に残りました。
  その理由は、宇野浩二の病気が凄まじいにも関わらず家に通い、宇野浩二の「画期的作品」(337頁)である『枯木のある風景』の原稿を6年がかりで著者が受け取ったという事実に思わず泣いてしまいそうになりましたし、過酷な状況に陥っているのに何とか小説を書き上げた宇野浩二も凄いですが、諦めずに宇野浩二を待ち続け最後には小説を受け取った著者の姿勢も負けず劣らず凄いなと思ったからです…。