『エステルハージ博士の事件簿』
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アヴラム・デイヴィッドスン『エステルハージ博士の事件簿』(池央耿訳、河出書房新社)を読みました。
正直な話、僕は二十世紀前半のスキタイ=パンノニア=トランスバルカニア三重帝国(と言う架空の国家)内での8個の事件(と書いてしまって良いものかどうか、僕個人としては今も迷っていますが…。)について、法学博士等の様々な肩書を持つエンゲルベルト・エステルハージが博覧強記を見せつけつつ解決していく8篇の短篇小説は、巻末の解説に書かれている様に「難解晦渋な箇所に拘泥することなく、素直に読」(268頁)む事ができなかったからでしょうか、内容をなかなか消化できず、読み終えるまでに相当時間が掛かってしまいました。
そして、どの短篇小説も各々面白かったのは確かなのですが、眠っているにも関わらず他人と会話する、ポリー・チャームズを待ち受ける運命が悲しい「眠れる童女、ポリー・チャームズ」、ある少女の身体的な障害が人魚伝説と結び付くことで起きた悲劇を描く「真珠の擬母」が個人的に強く印象に残りました。
最後に、僕自身への戒めとして書いておきますが、文庫版が刊行されたからと言って、単行本をすぐに読もうとするのは考えないといけないですね…。