『オリンピア』

デニス・ボック『オリンピア』(越前敏弥訳、北烏山編集室)を読みました。
この本は7篇の短篇小説(「結婚式」「オリンピア」「ゴーレム」「ルビー」「荒天」「スペイン」「マドリード上水道」)からなる連作短篇集で、主人公ピーターの視点から、ベルリン・オリンピック(1936年)から始まりバルセロナ・オリンピック(1992年)までのオリンピックを背景にして、家族についての物語が書かれているのですが、それぞれの短篇小説の前に置かれた主人公の祖父母や周辺の人々とベルリン・オリンピックとの関わりが描かれるエピローグの内容が影響しているのでしょうか、読み出した当初は簡潔な文章の連なりの中の緊張感に戸惑ってしまい、なかなか読み進める事ができませんでした。
ただ、主人公ピーターの母方の叔父ギュンターについての描写や、主人公の妹ルビーが病気になってから亡くなるまでの過程の描写等興味深いものが多く、読んでいる間何度も胸が苦しくなりましたが、どうにか読み終える事ができて安心しました。
そして、この本は全体を楽しむのが本来だと思いますが、この本に収められた7篇の短篇小説の中では妹ルビーが病気になってから亡くなるまでの過程が描かれている「ルビー」、主人公の父親の趣味、主人公の両親が離れるきっかけについて描かれている「荒天」が個人的にはとても印象に残りました。