「コレクターズ・ハイ」 | F9の雑記帳

「コレクターズ・ハイ」



 村雲菜月「コレクターズ・ハイ」(『群像』2023年12月号所収)を読みました。
 なにゅなにゅオタクでカプセルトイの会社に勤務している主人公、彼女の縮毛矯正をしている「髪オタク」(131頁)の美容師である品田、なにゅなにゅグッズがきっかけで主人公と知り合ったクレーンゲームが上手い森本さん、彼ら三人の関係の描写を中心に小説は進んでいくのですが、以前読んだ第66回群像新人文学賞当選作の「もぬけの考察」とは違って”普通“の小説だったからでしょうか、最後に一抹の寂しさはあるもののほぼ一気に読み終えてしまいました。
 個人的には、偶然の出来事を契機として(タイトルに繋がる)変態性が明らかになる品田と森本さんは勿論の事、主人公の職場の部長や主人公の勤務先の会社の同僚でヒット作を次々出している轟木さんの行動の描写もなかなか強烈で、この小説には(色の濃淡はありこそすれ)変態的な性格の登場人物が多いなと読んでいて思いました。
 まあ、美容師がカットした後のお客さんの髪の毛の写真を無断で撮影していたり、クレーンゲームで目的のものを手に入れたら相手の髪の毛を触らせてもらったり、会社の会議で部下がプレゼンした企画を殆ど却下したり(←これは少し違うか。)、街中で人の持ち物や服装を撮影して会社での新商品の企画書にそんな写真を添えるのは…。
 また、毎日なにゅなにゅについて考え、積極的にイベントにも出掛ける主人公は、他の小説なら十分に強烈な性格のはずなのに、この小説の中ではあまり目立たない人物になってしまっているのは、偶然にしろ意図的にしろ何だか面白いなと読み終えた後に感じました。