『ヴァレンタインズ』

オラフ・オラフソン『ヴァレンタインズ』(岩本正恵訳、白水社)を二週間かけて読みました。
この本には月の名前が題名の小説が十二篇収められており(2008年のオー・ヘンリー賞受賞作である「四月」も収録)、どの小説にも日常がある出来事をきっかけに壊れたり崩れたりする様子が描かれており、一篇読み終えるたびに人間と言う存在の(ある意味での)不思議さと人間関係の難しさについて考えてしまいました。
個人的には、
・十年ぶりに会った恋人に対して自分の気持ちに正直になれない主人公の姿が印象的な「一月」
・旅行先で負傷した夫が、子供がいないのにあたかも息子がいるように振る舞ったせいで夫婦間に溝が生まれてしまう「三月」
・息子と夫が湖で起こした水難事故をきっかけに妻の不信感が膨らんでいく「四月」
・同性愛を告白し、家や家財道具を売る妻に対して、最後の最後で感情を爆発させる夫の姿が強烈な「五月」
・妻を亡くした弁護士が亡き妻に似た女性に出会った事で自分や周囲の人々の人生を変えてしまう様子を追っているうちに虚しくなった「六月」
・昔付き合っていた彼女と偶然出会った主人公が旅行先で受ける仕打ち(というのは言いすぎかもしれませんが…。)と、詳細を知った妻の態度に怖さを感じる「八月」
・仕事において威勢のいい夫に対して不信感が増していき、友人に相談したりしていた妻の感情の爆発の描写が「九月」
・他人と寝る事を時々思う妻、最終盤で友人の妻と2度寝たと告白する夫の姿が対照的で読了後嘆息してしまった「十二月」
が印象に残りました。