『E.M.フォースター短篇集』

この本には8篇の小説が収められています。
以下に各々の小説の感想(めいたもの)を書いておきたいと思います。
・「コロヌスからの道」:仮に運命というものがあるとして、娘たちのせいでそれから外れたルーカス氏は一体どうなってしまうのでしょうか。物語の終盤で不穏な空気が流れていましたが…。
・「パニックの話」:外に飛び出し自由を得たユースタス、謎の死を遂げる漁師の息子ジェナーロ…、謎が謎のまま残され、読み終えて不安になりました。
・「シレーヌの話」:「シレーヌとは何だ?人魚か?」と読み終えて多少モヤモヤは残りはしたものの、非常にスッキリした気分になりました。
・「アーサー・スナッチフォールド」:一時の快楽のために若者の運命を変えてしまった主人公の後悔の念は十分に理解できましたが、「男同士の猥褻行為」(110頁)がかつてはこのような結果を招きかねないという事が分かり、個人的にはかなり衝撃を受けました。
・「永遠なる瞬間」:読んでいて、主人公の小説家の女性には腹が立った一方、軍人の大佐には同情したくなりました…。
・「アンドリューズ氏」:僕はあまり想像した事はありませんが、この小説にあるように、神々はどこか奇妙で、天国は凄く詰まらない場所かもしれないですね…。
・「ホテル・エンペドクレス」:この小説のハロルドの様に現在と過去が地続きになれば周囲はしんどいと思いますが、それでも愛する語り手はなかなかですね…。
・「機械は止まる」:3部構成。第一部を読み終えた時点は「読者を舐めすぎていないか」と思いましたが、第二部、第三部と読み進めるにつれ機械への依存が齎しかねない危機が書かれていて安心しました(?)。