「うるさいこの音の全部」

高瀬準子「うるさいこの音の全部」(『文學界』2023年2月号所収)を読みました。
まず、表紙や目次にあるように確かにサスペンスフルな内容ですが、作家とその人自身の関係について小説を書くと言う事に驚きました。
しかし、文学賞を受賞すると、早見夕日として居住している市の市長から電報が来たり、勤務先の社内報へのコラムの執筆依頼が来たりするんだ、大変だな…。
次に、この小説の中には、幾つかの箇所に主人公の長井朝陽が書いた(近い将来、作家早見夕日の小説として発表するだろう)小説の一部分が置かれているのですが、個人的には長井朝陽自身に「大学生の女の子が、中華料理屋の息子をおだてておごらせたり、付き合ってすぐ分かれて、話をしに来た中国人のその元カレを、警察を呼んで追い払ったりする、話」(45頁)と説明される小説が、以前読んだ高瀬準子の何篇かの小説とは違い、読んでいて興奮しました。
もっとも、これらから受ける印象や長井朝陽の勤務先のヨシオカさんや書店員の帆奈美、やや地味な長井朝陽の母と言った登場人物達がが余り派手でないからこそ、「この小説は凄い」と読書中感じていたのかもしれませんが…。
