『人間のしがらみ』

サマセット・モーム『人間のしがらみ(上)(下)』(河合祥一郎訳、光文社古典新訳文庫)を読みました。
作者のサマセット・モーム自身が序文に書いている「自伝的小説」(上巻11頁)だからでしょうか、登場人物が沢山出てきましたが、(医学校に入学したり生地商の店舗の売場係になったりと)紆余曲折を経て主人公フィリップが幸せを感じる最後に何だか嬉しくなると同時に、(主人公フィリップの友人だったクロンショーのペルシャ絨毯の模様のメタファーの様に)勉強になる部分も多かったです。
とは言え、幼い頃に母を亡くした後叔父の家に預けられ、足が悪い事もあってか学生時代から楽しみより苦しみの方が多い展開は(主人公フィリップの気持ちの変化も含めて)理解できたがゆえに辛かったです。
加えて、この小説に多く登場するミルドレッドが主人公フィリップに取る非道い態度に対して(印象には残ったものの)心の中で「最悪!」と叫んでいました。
そして、(この小説の内容には関係ないですが)この小説は以前から『人間の絆』の題名で訳されてきた小説の新訳ですが、下巻の(“絆”と言う単語にはしがらみや束縛の意味もあったのに、次第に単語の持つ意味合いが変わってきたと言う流れにより題名を変えたと言う)「訳者あとがき」を読んで題名の変更の理由に納得すると同時に、日本語の難しさを感じました…。
