「祈りの痕」 | F9の雑記帳

「祈りの痕」




 中西智佐乃「祈りの痕」(『新潮』2021年8月号所収)を読みました。
  人のためと言いつつ自分の主張を振りかざし、時に暴力行使すら辞さない主人公(野口美咲)の兄、そんな彼の態度を否定しない主人公の家族(特に母親)に腹を立てたり、主人公の勤務先で知り合った高校生の戸田(女性)の普段から弟の事は勿論、離婚した後男を頻繁に家に連れてくる母親の事も考え行動する様子や、(最初は主人公からの救いの手を断る等)芯の強さに感心しながら読み進め、もしかしたらこの調子で終わるのかな、それでも構わないかもしれないとかなり終盤まで考えていたのですが、最終盤で主人公が自分を変えようとする展開が待っていて、(ありがちかもしれませんが)意外で感動しました。恐らく、この小説に一番相応しい結末だと思います。タイトルの印象も読み出した時と読み終わった時でかなり変わりましたし…。
 しかし、“新潮新人賞受賞第一作”と表紙には書いてあるのですが、読んでいる間新人賞受賞作がどんな感じだったか、まるで思い出せませんでした。以前読んだはずなのですが…。