海軍が寄港する上海などでは、以前より軍人相手の妓楼がありました。
しかし、南京城陥落(昭和12年12月13日)に伴う混乱のため、暴行防止と性病感染対策のために、日本から上海へ女性たちが送られてきました。
この人たちが、慰安婦としての最初の人たちでした。
昭和13年(1938年)1月2日、上海の小学校にて、日本から送られてきた約100名(邦人20名、朝鮮人80名、いずれも北九州在住者)の身体検査を、陸軍軍医であった麻生徹男少尉が行いました。
2月上旬から上海楊家宅にて慰安所を開設。続いて、江湾鎮民営の軍慰安所を開設。
官営はその後まもなく閉じられて、民営の慰安所のみとなりました。
この昭和13年1月2日の行われた慰安婦検診の結果について、麻生徹男軍医による報告書が以下の通りです。
「花柳病(性病)の積極的予防法」
1、緒言
ある疾病にして患者及びその周囲の者に関連する利害関係が大なれば、その疾病の社会的意義は大なりと言う可し。
その意味において花柳病はその平時、戦時たるを問わず、急性伝染病は別にして、結核に劣らぬ重要性を有するものなり。
されば、その撲滅の目的貫徹には今日まで考察せられたる諸種対策の中、小部分的固執、小部分的欠如も賦課にして、宜しく全面的充実を期せざる可からず。
すなわち目的とするは、既患者を治療し、健康者に伝染せざる如くするにあるをもって、既患者、健康者各個への治療予防の諸問題と共に、その対社会的因子の調査研究を必要とす。
伝染源、病種別、転帰別、等の頻度、数量の統計的観察を為し、将来への対策に資する所有ラザル可からず。
これらの内、人ありてかある物を積極、ある物を消極なりと区別する趣きあるも、本症のごとく重大社会性を有する疾病においては全て、対策が平等なる発言権を有する者なり。
2、娼婦
昨年1月小官上海郊外勤務中、1日命令により、新たに奥地へ進出する娼婦の検査を行った。
この時の被検査者は(朝鮮)半島婦人80名、内地(日本)婦人20名にして、
半島人の内花柳病の疑いある者は極めて少数だけれども、内地人の大部分は現に急性症状こそないが、はなはだ如何わしい者のみで、
年齢もほとんど20歳を過ぎて中には40歳になろうとする者もいて、既に売淫稼業を数年経験してきた者のみである。
半島人の若年齢かつ初心者なる者の多いこと興味ある対照をなせり。
後者の内には今の支那事変に際して、応募してきた。未教育補充ともいうような者が混じっていた。
一般に娼婦の質は若年齢ほど良好である。すなわち、ミュンヘン市における検査では、2,686人の娼婦中、花柳病に罹る者は26.5%に及び年齢別では、
16歳以下 19
16歳〜18歳 104
18歳〜21歳 239
21歳〜30歳 281
ミュンヘン市未成年者において3年間に判決された年若き娼婦の中に花柳病と診断された者は、
15歳 55%
16歳 61.5%
17歳 68.6%
であり、若年齢の者ほど、疾患率は小さい。また、「スツットガルト」の娼婦五百六十五人においては、
14歳〜21歳 55.0%
ミュンヘン市においては1908年23.5%、パリ市においては58.0%である。また、昭和7年福岡県における年齢40歳までの調査において、20歳以下の者の数は、
芸妓 56.3%
娼妓 29.1%
酌婦 44.6%
女給 46.5%
である。すなわち、娼婦の約半数は年齢20歳以下の者ということになります。
故に若年の娼婦に保護を加えることが重要にして、意義あることなり。
されば、戦地へ送り込まれる娼婦は年若き者を必要とする。しかして、小官某地にて検査中、手術の痕跡があり、明らかに既往花柳症の烙印を押され、アバズレ女の類は敢えて一考を与えたし。
これ皇軍将兵への贈り物として、実に如何わしき物である。如何に検査を行うとはいえ。
一応戦地へ送り込む娼婦は内地最終の港湾において、充分なる淘汰を必要とする。
ましては内地を喰いつめたが如き女を、戦地へ鞍変へさせるということは、言語道断の沙汰である。
これと類似する問題として、現地支那の娼婦及び難民中の有病売淫者への微毒性疾患の浸潤に驚く。
これらに対して、軍としてもし必要なら軍用慰安所として、我が監督下に入るか、しからざる者に対しては断固として処置する。
ドイツでは、ケルン市の守備兵間に一時花柳病が蔓延し、特に厳重なる検査も効果なく罹患者22%という高率である。
これすなわち、私娼の結果によるものである。
このため、ケルン市においては英米の先例に倣い、女警官をおき、この粛正にあたり、著しい効果をだしたという。
ここに注意する支那娼婦の内、ある者は予防法である「コンドーム」の使用を忌避し、そのはなはだしきはこれを破棄する。
これは、敵の謀略により戦力を消耗させられるのと、同一の結果である。
(「花柳病の積極的予防法」陸軍軍医 麻生徹男)
参考図書
「慰安婦と医療の関わりについて」麻生徹男、天児都著
