「どうしたらええの?
な~…シャボンちゃん…」
オカンは 義理の父親や母親の面倒を見た経験がない。
ま、早くに離婚しとるわけやし。
オカンが 実母や実父の面倒を見ないといけないような歳になった時は
シャボンは とっくにオカンより先に
旦那父を見、旦那母を見てきていて
とっくに全て経験済みだった。
普通、親は 子より先に色々経験していて
子は親に聞くんだ、
「どうしたら良いの?」
「お母さんの場合、どうだった?」と。
親は「経験の引き出し」を開けるんだ。
人生の先輩として。
シャボンは子育てに関しても
自分の事だらけ!のオカンに 色々と教えてもらえなかったし、
もらいたくもなかった。
逆に親の面倒に関しては
「どうしたらええの、シャボンちゃん…」
と聞かれとる側やし。
シャボンの旦那の両親は シャボンが結婚する頃から歳老いていたし
全てが本当に手探りだった。
当時、オカンは シャボンの苦労も辛さも分からず
自分が如何に満足するか?
で シャボンに満足を求めていたさ。
シャボン夫婦もまだ若かったからね、
走る~♪走る~♪俺達~♪
と走れてたさ。
シャボンは走れなくなった。
急に その日は訪れた。
「シャボンちゃん…
オカン、息が…
息がしにくい、
は…息が…」
今日の夕方、たまたま 娘も坊主も家にいない時だった。
ぐったりシャボンだったけど
「息しにくいんか?
呼吸に神経がいっとるからやないか。
ゆっくり息を吐いてみ。」
オカンの傍に行く訳でもなく
上から目線でもなく
全然 動揺してません!
の態度で
「シャボンが いつもなっとる症状や。
ゆっくり ふぅ~と、まずは吐いてみ。
大丈夫や、死にはせんわ。
救急車呼んでも 来た時には普通に息しとるわ。」
胸に手を当てるオカン。
ゆっくり~~の シャボンの声を聞いて
呼吸を整えるオカン。
発作が落ち着きを見せる。
「オカンな…
この前、夜に こんなんなって死ぬかもしれんって思ってん…
全部調べてもらったのに異常無いねんて…
何処おかしいんやろ…」
パニック障害だよ、オカンよ。
「ふ~ん~。
神経は飛びよるから 神経からやろ。
だからって そんなんなったら 恐いやろ。
別に死にはせん!
シャボンがよくなっとる。
対処も知っとる。
オカン?人のな、話をちゃんと聞けるか?
シャボンの話を ちゃんと聞こうと思えるか?
オカンはな、人の話を聞かん所があるやろが?
その息苦しいのな、たまらんやろ?
ジタバタしてまうから、ちゃんと話聞き~な。
いっぺん、シャボンの話をちゃんと聞いてみ~な。」
オカンはソファーで横になりながら シャボンの顔一つ見ずに
目を閉じていた。
別に聞いてなくてもいいわ。
シャボンは話を続けたんだ。
「目~開けてみ。
息苦しいのは 自分でも気付いてるはずや、
なんかおかしい…って
前兆があるやろ?
その時に こうして座ってな
まず 目を閉じるんや。
勝手に脳に送られる目からの情報をシャットアウトするんや。
次に耳。
耳に色々な雑音が入るやろ。
耳から送られた情報はまた 勝手に脳に送られ
色々と脳の中を混乱させよる。
今度は それをシャットアウトする。
耳栓しても一緒やで、神経が立ってる時は
耳栓も無駄や。
それには 自分の声。
自分の声を 自分の耳に入れていくわけよ。
腹式呼吸しながらな。」
目を閉じてたオカンは
目を開け、シャボンの話を聞き
ソファーに座り直し真似をしようとしていた。
「まず お腹に手を置く。
お腹に手を置いた!とか、まずは声出して言うんや。
その事に集中するんや。
自分の声を耳に入れて
雑音と言う雑音をシャットアウトする。
次にオカンは 顔に力が入ってる感じやし
顔の力を抜いて~♪と言いながら
力を抜いていく。
抜いてみ。そ~。
息苦しくなりそうな時は 先に息を吐いていくからな、
ゆっくり3分の1だけ吐くで、次は。
肩の力を息を吐くと一緒に吐く~
肩、力抜けたかな?と 今度は声を出せんから
心な中で集中して~ 力を抜く~~~
次、鎖骨~
胸~
お腹~
最後は お腹がペッタンコになった~?と集中~
置いてる手がへこんだ~?
心の中で言う~
はい、全部 息を吐いた~
次は 今度は鼻から 3分の1~
ゆっくり 吸う~
まず お腹~
お腹膨らむ~
胸~~膨らむ~~
鎖骨辺り~~
はい、どんどん上に行って~
肩~~
なんか上がる感じやな~を意識して~~
はい、全部 吸った~
ん?全部吸ったかな?みたいに 必ず それだけに集中する~
これを繰り返す~
色々と頭を過ぎりよるで~
はい、よぎったらまた 集中~
お腹へっこんでないんちゃうか?でもええ、
よぎる色々を この呼吸しとる自分に意識を持っていくんや、
最後~首をグルグル~
回す~~~呼吸忘れず~
首の筋、伸びてるかな~で 伸ばす事に集中~
ふぅ~~~
ふぅ~~~~」
一緒に 何度もやる。
目を閉じて 何度もシャボンの声とリズムに合わせて
ゆっくりゆっくり腹式呼吸をしたオカンは
パッと目を開け
「あれ?
しんどくない!
それに 首から肩とか目がシャキッとした感じになってる!
なんで?!」
知らんがな。
「良かったな。
あんな~。もし、おかしいな~の時、
ソワソワしたような時でもええ、
今の事を繰り返すんや。
はっきり言って簡単じゃないねんな、これ。
脳は勝手に色々と考えようとしよるからな、
やってる最中にも 色々と過ぎって邪魔してきよる。
腹式呼吸がオカンに合うなら したらええ。
腹式呼吸をやれ!言うてんじゃない。
乱れそうな呼吸に意識を持っていかないようにする方法なら
なんだって結局は良いんよ。
ただ アワアワするだけやったらアカン訳よ。
腹式呼吸は一番 何処でも出来るからな、
難しいけど やってみたらええねん。」
の頃には シャボンがソファーに横になりながらタバコ吸ってたわ!
オカンは パニック障害だと診断されてないみたいやし、
頓服も出されてないやろう。
ただ 発作と戦うのは 苦しく 辛く 恐怖なんだと
シャボンが経験済みだ。
引き出しを開ける度、
「シャボンちゃん…
どうしたらええの…」
オカンが言う度
いつもシャボンは思う。
どっちが親なんだ…と。
そして 何故に ガリガリ君を やたらに欲しがるんかと。
最後に
何故に シャボンちゃん…シャボンちゃん…と
頼るだけ頼って 振り回すだけ振り回し、
勝手に消え続ける繰り返しをするんだろうと。
オカンの口から聞いてみたい
「良く眠れた」と。