ハムレット

@シアターコクーン

 

[上演時間]2時間50分(休憩15分)

[作]ウィリアム・シェイクスピア 

[翻訳]河合祥一郎 

[演出]サイモン・ゴドウィン [美術・衣裳]スートラ・ギルモア 

[出演]岡田将生 / 黒木華 / 青柳翔 / 村上虹郎 / 竪山隼太 / 玉置孝匡 / 冨岡弘 / 

町田マリー / 薄平広樹 / 内田靖子 / 永島敬三 / 穴田有里 / 遠山悠介 / 渡辺隼斗 / 

秋本奈緒美 / 福井貴一 / 山崎一 / 松雪泰子

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「ハムレット」を観に行ってきました。パンフレットは1800円。

マチネだけだったのですが、なにしろ演目がハムレットだけに3時間より短いということはあるまいと、その後の予定を入れず。

が、2時間50分だった…短め(実際にはカテコ入れてちょうど3時間くらいでしょうか)

 

 

またしても勝手な感想を書き残しておこうと思います。

とはいえまだ5月9日が初日、つまり始まったばかりなので、これから醸造されていくものと思われます。

ネタバレありますのでご注意を(内容そのものは有名とはいえ)。

 

 

 

 

 

 

 

 

正直な話、少々面食らいました。

とんこつラーメン食べるつもりで待ってたら、パスタ出てきた、みたいな。

要するに、思ってたのと違う感じだった。

現代風味、しかも薄味だった。

 

あ、でも突飛な現代解釈があったわけではないです。

ごく普通の言葉と舞台。衣装はやや現代調。

セットは場面転換がしやすい、3方向に尖った形。真ん中に階段と塔があってクルクル回る。

上から見るとたぶんこんな↑感じ(ちなみにこれは手裏剣の画像ですけどね(^_^;))

シンプルで効率的なセットは面白いと思いました。ちょっと空間が狭いけど。

 

戯曲「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」の元になってる二人も、もちろん登場します。

が、ギルデンスターンが女性叫び

これは現代の社会情勢を反映してるらしいですが、あえて女性が演じる必要あるかなあ?

 

 

翻訳は河合祥一郎さん。

野村萬斎さんが2003年に「ハムレット」を上演したときに訳したものを元に書籍化もされてます。

ちなみに某有名台詞は、「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」。

この訳を採用してるのは河合さんだけらしいです。

 

 

 

…おそらく自分が濃い味付けに慣れてただけかもしれません。

ハムレット役は過去に5・6人しか観たことないですが、一番印象に残ってるの藤原竜也くんだし。

主演以外のキャストも濃かったのよ、とにかく。

 

 

いや今回主演の岡田ハムレットは決して悪くなかった。

わりと弱々しい感じで、迷いが多くて、でも王子としての華がある。

それも一つのハムレット像かと。

演出家は単純に、○○年のデンマークを描きたいわけではなく、もっと漠然とした世界観を意識してるようだし。

ただ、ハムレット自身はそれでいいとしても、周囲がとても薄味に感じてしまって。

 

そもそも復讐の動機となる父王の亡霊が…弱いあせる

禍々しさとか恨みとかおどろおどろしさとか感じないあっさりめの登場なので、どうしてもその後のハムレットの苦悩がしっくりこないんです。

ハムレットが、あの亡霊はよもや自分の妄想か?と迷うのは合ってるのかもしれんが。

 

 

演出や役者さんにもよるのだろうけど、「ハムレット」って他の登場人物との関わりがとても印象深いんですよね。

ハムレットと叔父クローディアスとの関係とか、ハムレットと母ガートルードとの関係とか、ハムレットと親友ホレイショーとの関係とか。

もちろんオフィーリアも重要だし。レアティーズとの対比とか。

 

うーん…今回は回りの方も結構薄味だった気がするので、どうしてもハムレット一人の物語みたいに見えてしまった。

あるいはそう見せようとしてるのか?

松雪さんのガートルードはまあまあだったけど、もっと女特有の毒気が強くても良かったかな。

「母」でも「女」でもない、中間な印象のままだった。

 

 

演出がさほど遊びのない感じで物語がシンプル、だから上演時間が短めなのかも。

墓堀りのシーンとか、オズリックのくだりとか、あっさり流してる。

 

面白いなあと思ったのは、幕間に入るタイミング。

叔父クローディアスが兄王殺しの罪を悔いて神に祈っている、その姿を見かけたハムレットが、好機とばかりにナイフで襲いかかる。

というシーンで休憩。ここで切るかビックリマーク

まさにテレビ的っていうか、続きが気になってチャンネル変えさせない手法みたいだ汗

 

この絵づらがまさに、サスペンス風味。

十字架の前で跪く男と、それを殺害せんとする道化風メイクの男。…すごい絵だ。

でも実は祈る男のほうが殺人者で、道化風の男が復讐心に燃える王子なんですよね。

この、内心と見た目が逆説的な絵が面白い。

 

 

1幕最初のあたりも、場面転換ごとに軽い音楽が入るのがテレビっぽいと思った。

パンフレット見たら、音楽がかみむら周平さんだった。…ああ、なんとなく古典とは縁遠い感じ(偏見)。

かみむらさんって、ミュージカル俳優さんのコンサートでバンマスやってるイメージ強くて(偏見)。

 

 

びっくりしたのは狂ったオフィーリアが花々を手渡すところ。

実際に花を手に持ってる演出がほとんどだと思いますが、なんと狂える黒木オフィーリアは自らの髪を束で抜いて花に見立て、差し出すというスプラッタ叫び

こ、怖い、これは怖い。

オフィーリアの狂気ってなかなかしっくり来ないのですが(歌ってるとどうしても素顔が見える)、この演出は怖かった。

 

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最初に書きましたがまだ上演は始まったばかり。

私は1回限りなので行く先は見届けられませんが、これから良くなっていくのでは?

と、思います。たぶん。

 

ただ個人的にはこってりが好きなんです、胸焼けするようなこってりが。

ホレイショーとの暑苦しい友情とか、母親との愛憎とか、これでもかと言葉を並べ立てる激しい怒りと嘆きと恐れとか。

 

時を経てもこの「ハムレット」があっさりめなのは変わらないだろう、きっと。

好みの問題です。