マーガレットの花弁で占う。2
「じゃ、また明日来ますね」
毎日届けてる、近所のおばあちゃんの花を届けた。
おばあちゃんは。
足があまり良くなく。
それでも、亡くなったおじいちゃんの仏壇に、毎日新しい花を供えたい…。
と、言われ。
毎日、三時過ぎに花を届ける。
「あっれー、松本…くん?」
おばあちゃんの家を出た所で。
あ…。
さっき櫻井さんの店で会った…。
「…あぃば…さん?」
に出会した。
「やっぱり松本くんだーどうしたの? なになに? 配達?」
「あ…はい」
「オレもー」
右手に何か小さな包みを持ってて。
それは風呂敷で包まれた。
「お弁当」
だった。
そう言えば…。
「お弁当屋さんって…櫻井さんが…」
「翔ちゃんが言ってた? そうそう、オレね弁当屋っ」
「そうなんですね…」
「元々は父ちゃんが中華料理の店、やってたけど…オレは弁当が良いって、店のちょっと間借りしてやってんの」
「あっ」
そう言えば…。
俺の店の通りとはまた別の通りに。
昔から中華料理のお店がある。
「たぶんそれだね」
「そうだったんですね」
「良かったら今度来てみて? 翔ちゃんと一緒に」
「え」
櫻井さん…と…?
「あれ、中華嫌い?」
「いえ…」
そこじゃなくて。
中華は…嫌いじゃない。
「あ、じゃ、翔ちゃん嫌い?」
「っ」
見つめる相葉さんが。
「嫌いじゃないでしょ?」
少しイタズラに笑ってる。
「…」
「翔ちゃん、いい男でしょ?」
「えっ」
「イケメンだし、頭もいいし? 」
頭…いいんだ。
「性格は…ちょっと怖いとこあるけど…」
「えっ…」
怖いっ!?
「あっ、違うよっ…ヤバい人ととかじゃないよっ」
相葉さんが慌てて。
その姿が面白い。
「…ヤバい…って」
「真っ当なんだけど、ちょっと怖い…?」
「…ふふ…」
真っ当なのに…。
怖いんだ…。
「不思議な人ですね」
「そ、そんな…こと、あるかな…」
「いや、相葉さんじゃなくて…」
まるで自分の事のように頭を搔く相葉さんが面白くて。
「面白い人ですね…相葉さん」
思わず気持ちが言葉に漏れた。
「えーおれぇ?」
驚いたみたいに目を見開いてるけど。
その姿がまた面白くて、笑っちゃう。
「ふふっ」
笑ってる俺を見ながら。
相葉さんはゆっくりと目を細めた。
「優しいね、松本くんって」
…え…。
「翔ちゃんの為に、薬箱持ってきたり」
あ…。
「しかも走ってさ?」
…まぁ…。
「翔ちゃん…不器用だし…イケめてるからモテるし…」
不器用は褒め言葉…なのかなぁ。
「モテモテよ?」
うん…。
分かります。
「モテモテ…」
「そんなに何回も言わなくても、想像出来ますよ」
「だよねー」
相葉さんは笑って。
「骨抜きにされちゃった?」
…。
…。
…っ!!!
「されちゃったかー」
少し溜息混じりの相葉さんの声。
でも、俺は…。
「真っ赤だよ? 松本くん」
もう…。
なんだよっ。
赤くなんなよっ。
俺っ。
耳を押さえても、もう無駄で。
相葉さんはニコニコ笑ってる。
「大変だけど、頑張って?」
「…え…」
「オレね、応援しちゃうよっ」
え…っ。
「がんばれー松本くんっ…あ、いけね、時間だっ」
持っていた包みを思い出したのか。
相葉さんが慌てる。
「今夜来るでしょ? また話しよ?」
「え…っと…」
「翔ちゃんの事、いーっぱい教えてあげるよっ」
そう言って、ニカッと笑うと。
「ばぁちゃーーんっ、弁当持ってきたよーっ」
大きな声をかけながら、玄関の扉を開けた。