マーガレットの花弁で占う。3
店の後片付けを済ませながら。
思い出す。
さっき…。
肉屋のおっちゃんと一緒に花を届けた。
スタンドタイプの花をにしたんだけど。
『お、いーじゃん』
って、櫻井さんは喜んでくれて。
早速店の入口に飾ってくれた。
『さすが松本くん、おっしゃれー』
そう言う櫻井さんの後ろには…。
ジトーっと櫻井さんを見つめる…。
女の子達。
『モテモテよ?』
そう言った相葉さんの声が。
何度も何度も。
頭の中に広がる。
モテるよね…。
そんなの、分かってる。
分かりきってる。
だって…。
あの、カズも虜にしてるんでしょ?
女の子にだって、きっとモテて…。
モテモテで…。
ぽっと出て来た俺なんか相手にもされない。
そもそも。
俺は男だし。
きっと…。
俺なんか…。
絶対…。
俺なんか…。
「はぁぁ…」
思わず漏れたデカい溜息に自分でもびっくりして。
「なに、そのデカい溜息」
って、突然かけられた声に。
「えっ!」
更に驚く。
「幸せ逃げちゃいますよ?」
バッと音がしそうなくらいの勢いで振り向いたら。
ロールカーテンを半分下ろした入口のこちら側にカズが立っていた。
「…カズ…びっくりさせないで…よ」
「え? 背後には立ってないですよ?」
くすくすと笑ってるけど。
絶対わざとやってる。
「潤くんも行くかなぁーって思って、誘いに来ました」
「…」
どこに…?
と言わなくても、その行先は分かってる。
「行かないの?」
カズの革靴の音が…。
「櫻井さんの事、知りたくないの?」
ゆっくり近くなる。
「…」
それは…。
それは。
知りたい。
櫻井さんの事は知りたい。
けど…。
きっと綺麗な女の子に囲まれてて。
俺なんて入る余地もなくて。
モテモテの櫻井さんを目の当たりにして…。
俺、きっとヘコむ。
だって。
カズとも仲良しなんでしょ?
そんなの見たら…。
…。
…。
「えっ?」
ぱっと視線を上げてカズを見る。
カズはニヤリと笑って…。
俺の目の前に立った。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず…って言うでしょ?」
「こ…っ」
「敵を知るにはまず、相手の懐に飛び込まないと…」
「敵っ!?」
敵っ!?
って、誰!?
「今の潤くんの状態で言うなら、敵は櫻井さんでしょ?」
「えっ」
櫻井さんが敵っ!?
「ややこしいから、的だね?」
「えっ」
「恋の的? 標的? 恋の…」
「えっえっ…ちょっ…」
「潤くん、え、しか言ってないよ?」
カズは手の甲を口元に当てて、ふふっと笑う。
ど、どう言う事っ!?
混乱する思考。
カズは見透かす様に俺を見据えて。
「俺が櫻井さんを好きなのかって…聞かれたら…」
…たら…?
「それは…」
それは…?
カズの言葉を待つその瞬間。
俺の喉が…。
ゴクリ…と。
鳴った。