silly talkですってよ。 -16ページ目

silly talkですってよ。

妄想の産物っす。

妄想っす。

もう一度言いますが、妄想の産物っす。

飲み過ぎは、ダメです。2







「二年…何してたんです?」
「別に、寝て、飯食って…? それなり?」
「…そう言う事を言ってるんじゃないんですけど?」

でしょうね。

「それ、二宮に報告の義務ある?」
ちょっと強めに見据えても。
「ありませんか?」
スルッと交わされる。


あの頃。
コイツとのこのやり取りを、心地良いと思っていた。

皆まで言わずとも、分かり合える。

異性同性に問わず。
そう言う奴に出会える確率は低い事を…。
俺は知っている。

だからこそ。
二宮の存在は。

俺に取って。
心地良く。
便利な物だった。

「突然辞めて、それっきり…会社の損害考えました?」
「そこは二宮がその話術でなんとかすんだろ?」
「なんで俺が?」
面倒くさそうに目を細めた。


変わんねぇな…。

飄々としてる割に。
人の懐に入るのが上手くて。
相手をよく見てて。
間合いの取り方も抜群。

駆け引きも心得てる。

「あんな無能な上司を押し付けられて…」
「え? 押し付けられたの?」
「蹴落としてやりましたよ…全員」
「さすが」

やりそうだよな。

「ちなみに…一番の根源は…倉庫番にしてやりましたよ?」
「…」
「あとは…営業から追い出しました」

冷たい視線。

「無能な上司も、無能な同僚も…俺には必要ないんで」
「怖いねぇ…」
「当たり前でしょ?」
二宮がじっとこちらを見る。
「俺が唯一尊敬してるのは、後にも先にも…一人ですから…」
「…」

じっと…見つめられる視線が…。

痛い。

「そりゃ、どぅも…」
「アナタだと言ってませんが…」
「…」

胸糞悪ぃ。

完全に二宮のペースじゃねぇか。

「おまえねぇ…」
煙草を手に取って、少し雑に火を点けた。
「変わんねぇな…」
「…そうですか?」

煙草の下に置いてあった…ケースを手に取る。

「ほれ」
そこから抜き取った一枚の…名刺。
「やる」
「…ぇ…」
「今の俺の肩書き…」
受け取った名刺を見つめてから、二宮が顔を上げた。
「どうぞご贔屓に」
「経営コンサルタント?」

そ。
それが今の俺の肩書き。

「サラリーマンだった頃? 取引あった会社の社長がさ…会社がヤバいって…泣きついてきたんだよ」
会社を辞めたすぐの話だ。
「それを建て直してやって? そしたら噂が広がって…? 今じゃ引く手数多の俺よ?」
そのまま…。
流される様に。
それが肩書きになった…だけ。
「はぁ…」
二宮が分かりやすく溜息を吐く。
「こんなんじゃ…見つかるわけないじゃんっ」
「は?」
「おんなじ営業畑に居ると思って、取り先全部当たったよっ…」
「…」

うわ…っ。

珍しい…。

取り乱してやがる。

「こんなっ、こんなっ畑違いの所にいたら、見つかるわけないじゃんっ」
そう言い放つ二宮が。

『なんで櫻井さんが辞めなきゃなんないんだよっ』

そう言った。
あの頃の二宮と重なる。

「探したのか?」
「…っ」
ちょっと悔しそうに唇を噛み締めて。
「ちょっと…飲み物くらい、振舞って貰えません?」
睨む二宮の、手が空っぽだって事に。
「あはっ…」
今更気づいて。
「悪ぃ悪ぃ…」

そう笑った。