ガーベラみたいにポジティブに。1
「気になる?」
相葉さんの隣で少し飲んだ。
あんまり飲む気になれなくて。
本当に、一口二口程度。
その間も…。
視線は…。
櫻井さんと…。
カズ…に向いてて。
店の奥。
カウンターの端で。
二人が親密そうに話す姿から…。
目が離せなくて…。
「気になっちゃうよね?」
ビールらしき、オシャレな小瓶を飲んでる相葉さんに笑われた。
「…別に…」
そう答えてはみたものの…。
気になってるのは見え見えで。
「あの子…松本くんの知り合い?」
「あ、えっと…高校の時からの同級生…です」
「へー」
相葉さんは小さく笑ってから…。
「オレ、結構タイプかも」
「はっ?」
スルッと出てきた相葉さんの言葉に。
相葉さんを凝視した。
「くふふっ…そんなに驚く?」
「え、いや…」
「恋愛は自由でしょ?」
そう…だけど。
「それに…まつ…もう潤くんでいっか?」
「え」
「潤くんだって、翔ちゃんに一目惚れでしょ?」
「っ」
「恋は理屈じゃないし? 自由、じゆーっ」
自由過ぎ…だよ。
とは、思っても言えない。
「子犬みたいな顔して、中身子猫? みたいな?」
「え?」
「あの子」
相葉さんの視線の先には。
櫻井さんとカズがいて。
子犬は…カズだと…。
予測は出来る。
「後で連絡先聞こー」
「…自由すぎません?」
思わず声に出て。
「くふふっ」
また笑われた。
「だってさ、タイプなんだもん…仕方ないよね? 止められないんだよーオレ」
酔ってるんだろうか…。
やたらとテンションが高い。
「え、だって、潤くん」
潤くん…決定なんだ。
「止められる?」
「…」
「そんな視線であの二人見てて…止められるわけ、ないよね?」
「…」
どんな視線…してる…?
俺…。
「子犬くんが羨ましいって視線」
声に出してないはずなのに。
相葉さんに指摘される。
「…」
羨ましい…。
そう思った。
カズは二年前まで櫻井さんの後輩で。
確実に俺より櫻井さんを知ってて…。
櫻井さんの近くにいた。
きっと一緒に食事した事もあるだろうし…。
飲む事だってあった。
もしかしたら…。
カノジョ…って言う存在の事も知ってたかもしれない…。
『それは…YESであり、NOです』
カズはさっきそう言った。
『人としてはYESで、恋愛感情として…は、NOね』
とも。
『あんな完璧な男に恋愛感情抱くと疲れてヤダよ。俺はもっと…なんか抜けてる男がこのみですよ?』
そんな風に笑って。
『別に恋愛は自由だから、相手に性別は求めないし?』
って…。
カズらしく…。
俺の気持ちまで汲み取って。
『だからね…潤くんは』
柔らかく笑って。
『俺に気兼ねなく、櫻井さんに惚れて下さいね』
そう言った。
「大丈夫だよ?」
「えっ」
不意にかけられた言葉に。
意識を今に戻す。
「翔ちゃんって、誰にでもいい顔するけど、浮気者じゃないから」
「はい?」
ダレニデモイイカオ?
でも。
ウワキモノジャナイ?
「はい?」
「結構一途なんじゃないかなぁ?」
「あの…それって…褒めてます?」
「えっ、褒め言葉でしょ?」
キョトンとした顔で相葉さんは言うから。
どうやら本当に悪気はないらしく。
「あはは…相葉さんって、面白いですね…」
「あ、笑った…良かったー」
え…。
「ずーっと…こーんな顔?」
相葉さんが眉間に皺を寄せ。
「してたからさ? ちょっと心配だったけど」
え…。
それ、俺?
「笑ってくれて安心…っ」
ニコニコと相葉さんが笑うから。
つられて笑う。
そんな事にも気を使う人なんだ…と。
改めて実感して。
なんだか不思議と暖かい気持ちになった。
「いやっ…安心じゃないかも…っ」
急に焦った声の相葉さんを見ると。
その視線は…。
俺じゃなくて。
「うわぁ…ヤバい…」
相葉さんの笑顔が引きつってる。
「ちょー怖い」
相葉さんの視線の先…。
それは…。
こちらを見てる櫻井さんと。
その櫻井さんの肩を叩くカズの姿で。
そのカズの姿に…。
ちょっと。
ちょっとだけ。
イラッとした。