カクテルは意外に酔いが回ります。1
「ちょっと…視線怖すぎっ」
「あ?」
「そんなんじゃ、潤くん吃驚します」
そう言って肩を叩かれる。
「あら、相変わらずの撫で具合」
「ほっとけっ…」
変わらない二宮のからかいを雑にあしらって。
イライラする感情も吐き出した。
ベタベタしやがって…。
しかもなんか笑ってんじゃん…。
気に入らねぇ…。
そんな風に思う自分の感情に苛立ちながらも、困惑する。
「そんな風に感情丸出しの人でした?」
「は?」
新しい煙草に火を点けて、紫煙を吐き出す。
「もっと上手に隠してた…と、思うんですけど?」
「上手に…ってなんだ?」
「そのまんまの意味ですけど?」
せがまれて出した瓶ビールを飲みながら。
二宮も煙草を取り出す。
それを横目で見ながら。
また視線を…向けると。
雅紀が肩を竦めて。
困った顔して笑ってるやがる。
覚えてろよ…?
そんな思いを込めて、目を伏せた。
「潤くん…ね」
「…ぁ?」
「貴重な俺のオトモダチ」
「だろうな…おまえの友達とか有り得ねぇし」
「なんです? 有り得ねぇって…」
「そのまんま?」
口角を片方だけ引き上げると。
二宮は煙と一緒に溜め息を吐いた。
「自分で貴重って言ってんだろ?」
「まぁ…」
置いてあった飲みかけの瓶に口を付けた。
これは、俺専用。
「潤くんって…優しくて、ホワンとしてて…」
それは…分かる。
「俺の自慢のオトモダチなんです」
「そりゃすげぇ…」
「だからね…」
煙草を一吸いして。
ビールを一口飲んで。
二宮がこちらを見た。
「アナタが相手なら…不足はないんですよねー」
「は?」
それはどう言う意味だ。
「俺が唯一尊敬する人は…仕事も出来て、部下の面倒見もいい…それに…」
二宮は一度視線を落としてから、ゆっくりと遠くを見つめる。
それはまるで。
昔の記憶を辿るように。
「間違った事を間違ったと言える…」
「…」
「ま、言っただけじゃなかった…ですけどね?」
「ばーか…思い出させんじゃねぇよ…」
苦い記憶…だ。
握りしめた拳が痛むのは…。
気の所為…か。
それとも…。
昼間の火傷の傷か…。
「やっぱり…あれが原因なんです?」
少しトーン落ちた声。
「あれが…」
「二宮…」
言葉を遮るつもりで名前を呼んだ。
「あの時、櫻井さんは確実に…」
「黙れ」
低く掠れた声が出て。
やっと二宮が言葉を止めた。
止めた言葉の代わりに…。
聞こえる…。
溜め息。
「…あの子は…元気にしてますか…?」
あの子…。
「…」
短くなった煙草を灰皿で揉み消して。
「忘れろ…」
呟いて。
「二度と口にするな」
二宮を睨んで…。
見下ろす。
「さく…っ」
「こらーそこの子犬っ、翔ちゃんに噛み付くなーっ」
ぴりっとした重い雰囲気をぶち破る声は…。