カクテルは意外に酔いが回ります。2
「噛みつき禁止ーーーっ」
雅紀が。
「どーーーーんっ」
効果音付きで俺と二宮の間に突っ込んできた。
「相葉さんっ」
雅紀の後ろで、松本くんが慌ててる。
「翔ちゃんに噛み付くの、ダメーーーっ」
俺を背中に隠すように、雅紀が二宮の前に立った。
匿われる柄でもないんだが…。
「えっと…」
困惑する二宮が。
「噛み付いてるつもりはありませんが?」
自分を取り戻して雅紀を睨む。
「いーや、噛み付いてるねっガブガブだねっ」
「相葉さん落ち着いて」
「何この人、誰?」
俺に問いかけてるのか。
それとも松本くんか…。
「相葉さん…」
「潤くんには聞いてません」
あ…俺か…。
「俺の知り合い」
「しりあい? 知り合いじゃないでしょっ、親友でしょ?」
向きを変えて、今度は雅紀が俺に詰め寄る。
「ハイハイ…親友ですね」
「そう言う言い方気に入らないっ」
「あーそーですかー」
「なにそのボー読みっ」
「すみませんねぇ」
矛先がこちらを向いて部が悪く。
また煙草に手を伸ばして。
引き抜いた一本を口に咥えると…。
「吸いすぎですよ…」
柔らかい言葉と共に。
「…」
煙草を引き抜かれた。
「ずっと吸ってますよね?」
視線を上げた先に。
少し不機嫌そうな表情を浮かべた松本くんがいて。
「百害なんですから、せめて本数を減らして下さい」
花を器用に扱う指で。
素早く煙草を箱に戻した。
「わーぉ…スマート」
雅紀が呟くと。
ハッと我に返って。
「あ、すみませんっ、余計な事っ」
不機嫌そうな表情を一変して。
慌てた表情に変わる。
「すみません」
今度は困った表情で謝るから…。
「いや、いいよ…」
こっちも笑うしかなくて…。
雅紀も二宮も驚いた様に、俺を。
いや、松本くんを見詰めている。
「オレ…翔ちゃんの煙草…止められる人…初めて見たかも…」
「俺もです」
いがみ合っていた二人が驚くのは…。
そう言う事で。
俺も驚いてる。
「えっ…」
勿論、一番驚いてるのは…。
松本くん本人だと思うけど…?
「翔ちゃん、誰になんと言われても、煙草…やめないからね」
「うるせぇ…で、片づけられましたから…」
良くご存知で?
誰かに指図されるのは好きじゃない。
ほぼ、精神安定剤に近い煙草を止められるのは。
正直、イラつきを覚えるだけ。
「あーそう…」
雅紀は何かに気付いて。
「…おじゃま…かなっ」
ニコニコと何時もの笑顔を浮かべた。
はいはい…。
よくお分かりで?
と視線を伏せる。
「えーっと、カズ、くん?」
突然二宮の名前を呼ぶ。
「は?」
勿論二宮は怪訝そうに眉を寄せ。
「オレね、君、タイプっ」
「は?」
二宮が少し後ろに下がる。
そんな事お構い無しに、雅紀が二宮の腕を掴んだ。
「は、離せっ」
「ちょっとさ? 親交を深めない?」
「は? なに? ばかっ?」
「えーそれって、初対面の人に言う事?」
雅紀特有の笑顔を浮かべて。
「潤くんっ、誰これ!?」
「オレね、相葉さんっ」
「あんたに聞いてないっ」
珍しく二宮が動揺してる。
おもしれぇ…。
「ま、それはこれから知ればいっか?」
勝手に納得して。
勝手に決めて。
「あっち行こ?」
腕を引く。
「は? ばか? 何言って…引っ張んなやっ」
「カズっ」
松本くんが手を出そうとしたのを。
「櫻井さん?」
止めて。
「ちょっとっ、力加減っ」
「潤くん、翔ちゃんお願いねー」
二宮が雅紀に引き摺られるのを見送った。
「あの…櫻井さん?」
「いいんじゃね?」
「え…」
飲みかけの瓶を手に取った。
「二宮もガキじゃねぇし…」
「そぅ…ですけど…」
一口飲んで喉を潤す。
そっと視線を松本くんに送って。
「俺は松本くんと話したいし…?」
笑ってやる。
「…」
「いつから…雅紀と…」
ちょっと柄にも無いことを言いそうな自分に戸惑いながら…。
「あんなに、仲良くなった…の、かな…?」
つい口にしてしまう…。
「…」
「俺を差し置いて?」
「…っ」
言葉を無くしてる松本くんは。
少し…。
小さく見えた。