silly talkですってよ。 -11ページ目

silly talkですってよ。

妄想の産物っす。

妄想っす。

もう一度言いますが、妄想の産物っす。

ポインセチアの赤は葉っぱです。2







ざんねーん…って。

「あの…櫻井さん?」
「ん…」
「カズは…大丈夫なんでしょうか…」
見送ったものの…。

今更襲ってくる、不安。

「あはっ今更?」
「ですよね?」
そう。
見送ったんだから…。
もう今更なんだけど。
「絶対大丈夫って、俺は言いきれないけど…」
櫻井さんは入口のロールカーテンを下ろしながら。
「雅紀、は…」
言いかけて止まった櫻井さんがこちらを向く。
「…大丈夫じゃねぇな…」
そんな不安を煽る言葉を告げて。
笑う。
「…む…無責任…」
「ま、飲んだのは二宮だし?」
「そう…ですけど…」
「アイツもそこそこの大人でしょ?」
櫻井さんは緩やかに歩いて。
カウンターに回り込むと。
冷蔵庫から…。
また瓶の飲み物を取り出す。
「あ? 飲む?」
「いえ、お酒は…」

え…。

待って。

『送るよ?』って言ったよね。

まさかの…。
徒歩!?

思わず櫻井さんを凝視すると。
「ん?」
櫻井さんは驚いて俺を見返してくる。

「あの…ずっと…飲んでますよね…」
「あーまぁ…?」
「あの…」
瓶の飲み物を一口飲んだ櫻井さんが。
ふっと息を吐いて。
「これね…」
「…」
「炭酸水」
「…」

…え…?

「炭酸水だから、ノンアルコールね」
片方の口角を引き上げた櫻井さんの表情は。
強気で。

なんて言うか…。

綺麗で。

大人で。

「ちゃんと送るよ?」

俺の鼓動を早める威力を持っていて。

「え、っと、いや…送ってもらわなくても…っ」
慌てる。
「いえいえ送らせてください。付き合ってもらってるしね」
そう軽く笑った櫻井さんは。
店の片付けを始める。
「あ、手伝いますっ」
「あーいいよ…松本くんはそっちね」
絆創膏の貼られた手が指すのは…。

カウンターの上の花の山で。

「あ…はい」

改めて向き合って。

「カゴの花は…このままでいいですか?」
「あ、うん…手入れはお願いしても?」

…ふふ。

ホント苦手なんだ。

「いいですよ?」
「今笑った?」
「いえ…」
笑ったけど。
「そのまま枯らすよりはマシでしょ?」
「ですね」
櫻井さんは空の瓶を集め。
それをせっせと運んでいる。
「花束は…」
「誰かに譲りますか…ねぇ」
「え…」
運んだ瓶を、木の箱に詰めて。
カウンターの奥にある小さな部屋に運んでる。

そこはさっきちょっと覗いたけど。
この店の事務所みたいな感じだった。

「こんなに貰ってもね…花瓶もないし?」
事務所から出てきた櫻井さんが、カウンターの中。
俺の正面に立った。
「…少し、当たってみすね」
櫻井さんは俺の言葉に頷いて。
「助かります」
そう柔らかく笑った。

ドキッとするのは。

その表情が。
最初にあったふんわりと笑う笑顔…だから。

「松本くん」
「…っ、はいっ」
「こんな時間だけど…」

えっ。

その言葉に、腕時計に視線を落とし…。

「え…」

俺の腕時計に。
櫻井さんの手が重なって。

文字盤は…見えない。

「さ…」
「明日…仕事だって分かってるんだけどね」
正面の櫻井さんを見つめた。
「明日って言うか…今日だけど…?」

少し照れくさそうに見つめてくる櫻井さんから。

視線を反らせない…。


「もう少し…」

大きな瞳が…。
真っ直ぐに…。

俺を見て…。

「…いられない…?」

低い声が。

俺の鼓膜と。
心を…。

「いたいんだけど…」


…揺らす。