silly talkですってよ。 -10ページ目

silly talkですってよ。

妄想の産物っす。

妄想っす。

もう一度言いますが、妄想の産物っす。

この料理に合うのは赤ワインですか?1









柄にも無いことをしている自分に戸惑う。

戸惑ったとしても。

自分の行動を止める事は出来ず。

「ケーキ…食べる?」

松本くんを引き止める方法を模索している。

「ケーキ…ですか?」
少し鼻にかかった声は。
戸惑いを多分に含んでいて。

松本くんも俺同様、戸惑ってる事が分かる。

「そ、ケーキ。俺なんにも食ってないし」
「何も食べてないのに…ケーキでいいんですか?」
「勿体ないしね」
「そうですけど…」

他愛のない会話で。
なんとか戸惑いを消していく。


松本くんが、貰った物を仕分けしている姿を。
何となく視界の隅に捉えていた。

花の山の片付けを頼んだのに。
祝いの品をしっかり仕分けをし。
用途に合わせて、冷蔵庫を開けていた。

その姿はなんとも好感が持てて。

真面目な性格が垣間見える。

そんな松本くんの姿に思わず笑みが零れて。
そんな自分に焦ったり…。


「ナマモノは早めに食わねぇと…」
冷蔵庫を開けて箱を取り出すと。
背後で笑う気配がした。
「ん?」
「あ…いえ…」
振り向いた松本くんは何故か少し笑っていて。
それを慌てて引っ込める。
「なに? おかしかった?」
「あ…いえ…その…」
少し言いにくそうな雰囲気に。
俺は視線を落とした。

ガン見してたら言いにくだろうから。

ケーキの包装を解いて。
蓋を開ける。
「わぉ…洒落てんなぁ…」
「ふふ…」
思わず漏れた声に。
また松本くんが笑う。
「ん?」
やっぱりまた視線を上げてしまう。
今度は松本くんは笑いを引っ込める事はせず。
「…口調…」
「ん?」
「砕けますよね…」
「え…」
「どっちがホントかなぁ…って」

口調?
どっちがホント?

瞬きを繰り返しながら。
松本くんを見る。

「相葉さんが…」
「…」
「言ってたんです…」

あいつ…何言いやがった。

「真っ当に怖い人だって」
「は?」
「ヤバイ人ではないって」
「は?」

まーさーきーぃっ。

「ちょいちょい口調が崩れますよね? それがその部分なのかなぁ…って…」
「別に…ヤバイ人では無いですけどね」
自分で言って何処まで効果があるかは分からない。
仕方なく。
二宮に渡したのと同じ名刺を。
「はい」
取り出して、松本くんに差し出す。
「え…」
「雅紀曰く…裏稼業…ね?」
「裏稼業?」

そっちが本職なんだけどねぇ…。

「えっと…お店は…?」
「本業…?」
名刺を見つめたまま。
松本くんは動きを止めた。

本業はそっちで。
こっちが裏稼業…の筈なんだけど…ね。
「つうか…雅紀といつの間に仲良く?」
「あーえっと…昼間、配達先で偶然…」

偶然?

「会ったの?」
「…はい…」
なんだか小さくなって松本くんが頷くから。

可愛いねぇ…。

なんて…。
また…柄にもないことを思ったりして。

「お、うまそっ」
あえてケーキの箱を覗き込んで。
そこに反応するフリをする。
「松本くんくんは?」
「え?」
「どれにする?」
箱を少し傾げて、松本くんに差し出すと。
少し小さくなっていた松本くんが…。

目を輝かせた。

「あ…モンブラン…」
「好き?」
「…はい」
少し頬を赤らめる姿も。

なんとも新鮮で。

「あ…皿…」
「あ、俺出しますね」
松本くんがそう言うのをどこかで期待してた自分もいる。
「悪いね」
「珈琲…あります?」
「あ、あるよ?」
「それなら、珈琲淹れます」
「悪いね」
そう言って、カウンターを明け渡して。
自分は煙草に火を点けた。

「吸いすぎですからね」

お、そこは強気なんだ。
ケーキと珈琲の準備をしながら。
しっかりこちらの様子も伺ってて。

「見逃して頂けると助かるんですけどねぇ」
「見逃せません」
強めに睨まれる。
「ケーキ二個食っていいから」
「そこは一つで」
「あ、そう?」

なんだか恥ずかしいくらい甘い空気に。
ケーキを食う前に胸焼けしそうで。

「やっぱり吸ってい?」

って笑うと。

「握り消すのはナシですよ?」

昼間の苦い記憶を思い出して。
笑う。



この空間を手離したくないと思っている自分がいる。

そんな自分に。
そんな感情が残っていた自分に…。

驚いて。
それでいて…。

嬉しい…と。


思う。