季語短歌24-9-16 | ひろちん。のエスキス

ひろちん。のエスキス

廣珍堂と同じひと

  先週 X(旧Twitter)で詠んだものです。一部推敲・詠み直ししています。

 1,  = 西瓜(すいか) =

 庭先へ西瓜の種を噴き出して幼馴染は家業を継ぐと 


 2, = わらさ =

 ゆふぐれの女将ひとりの小料理屋にワラサの脂醤油に浮かべ 


 3, = 龍淵に潜む(りゅうふちにひそむ) =

 今日もまた谷の暗さは増してをり龍淵に潜む空爆のあと 


 4, = 行水名残(ぎょうずいなごり) =

 令和なら行水名残は来ぬままに体温並みのマンションの水 


 5, = 竹の春(たけのはる) =

 鄙びゐし道もいつしか舗装され竹の春へと外人の列 


 6, = 秋旱(あきひでり) =

 台風が秋旱の借り返すとかやたら多くの風雨運びつ 


 7, = 案山子(かかし) =

 ハチ公と少し離れて立つ案山子、待ち合わせなんて嘘だった、やはり 



・わらさ:鰤の若魚の関東における呼称。体長は六十センチで、孵化後三年ほど。刺身や鍋の具材として食す。鰤は出世魚であり、関東ではワカシ(二十センチ)→イナダ(三十~四十センチ)→ワラサ(~六十センチ)→ブリ(六十センチ~)と名前を変え、関西ではツバル→ハマチ→メジロ→ブリとなる。

・龍淵に潜む(りゅうふちにひそむ):春分の頃の「龍天に昇る」に対応するが、同様に秋分の頃の想像上の季語。中国からわが国に伝わった。

・行水名残(ぎょうずいなごり):秋になって行水を使わなくなること。

・竹の春(たけのはる):仲秋:筍を育てるのに養分を費やした竹は、秋になると活気を取り戻して、葉に春を思わせる鮮やかな緑が蘇る。晩春の「竹の秋」に対する季語。