先週 X(旧Twitter)で詠んだものです。一部推敲・詠み直ししています。
1, = 西瓜(すいか) =
庭先へ西瓜の種を噴き出して幼馴染は家業を継ぐと
2, = わらさ =
ゆふぐれの女将ひとりの小料理屋にワラサの脂醤油に浮かべ
3, = 龍淵に潜む(りゅうふちにひそむ) =
今日もまた谷の暗さは増してをり龍淵に潜む空爆のあと
4, = 行水名残(ぎょうずいなごり) =
令和なら行水名残は来ぬままに体温並みのマンションの水
5, = 竹の春(たけのはる) =
鄙びゐし道もいつしか舗装され竹の春へと外人の列
6, = 秋旱(あきひでり) =
台風が秋旱の借り返すとかやたら多くの風雨運びつ
7, = 案山子(かかし) =
ハチ公と少し離れて立つ案山子、待ち合わせなんて嘘だった、やはり
・わらさ:鰤の若魚の関東における呼称。体長は六十センチで、孵化後三年ほど。刺身や鍋の具材として食す。鰤は出世魚であり、関東ではワカシ(二十センチ)→イナダ(三十~四十センチ)→ワラサ(~六十センチ)→ブリ(六十センチ~)と名前を変え、関西ではツバル→ハマチ→メジロ→ブリとなる。
・龍淵に潜む(りゅうふちにひそむ):春分の頃の「龍天に昇る」に対応するが、同様に秋分の頃の想像上の季語。中国からわが国に伝わった。
・行水名残(ぎょうずいなごり):秋になって行水を使わなくなること。
・竹の春(たけのはる):仲秋:筍を育てるのに養分を費やした竹は、秋になると活気を取り戻して、葉に春を思わせる鮮やかな緑が蘇る。晩春の「竹の秋」に対する季語。