日が傾いてきた。
どこもかしこも停電しているから,日が落ちてしまえば真っ暗になるだろう。
そうなる前に妻を捜さなければならない。
出花の集会所は自宅アパートよりも海よりにある。
当然浸水しているだろう。
とすると,避難先は中野栄小学校である。
踏切を渡り,線路を超える。
警報がカンカンと鳴り止まず,かなり耳障り。
踏切から見える線路上には,瓦礫や水没車両が散乱しているが見える。
電車など来るわけがない。
遮断棒は誰かが取り外したらしく,通行は自由。
線路を越えたその先が水浸し。
津波は国道を超え,線路を越えたのだ。
どうにか小学校へ到着。
体育館は人でごった返している。
地元の方々だけではなく,
仙台新港近辺の工場に勤務する人たちが,
作業服にヘルメットのまま避難してきている。
消防団や商工会の面々が毛布を運んでいる。
手伝わなければと思うが,今は妻が最優先。
作業服を着た人たちが,床にダンボールを敷いている。
子供達がステージの上で遊んでいる。
顔見知りのお年寄りが,毛布にくるまってろうそくの小さな炎を見つめている。
体育館を探すが,どうしても妻が見つからない。
アパート1階の奥さんと一緒に避難しているはずだが・・・。
体育館に収容しきれなくなったため,教室にも大勢避難しているという。
1階から順に,教室を一部屋ずつ探す。
1階をすべて探したところで,長男が6年生当時担任だった先生に出会う。
明かりを灯す発電機を回そうと,必死でがんばっている。
既に外は薄暗い。とにかく明かりが必要なのである。
妻を捜さなければならないのだが,つい手を出してしまう。
プラグがカブっていないか,火花は散っているか,燃料は出ているかをチェックし,
何度もエンジンを回すが,なかなか点火しない。
そうこうしている間も,余震は続く。
校舎が耐えられないほどの余震が来たら・・・とチラッと思う。
恐怖心は周囲に伝播する。
作業に専念して恐怖心を無理やり押さえ込む。
30分ほど格闘したが,ついに断念して消防団に委ねる。
先生にお詫びをし,再び教室を探して歩く。
4階まですべての教室を探したが,妻がどうしても見つからない。
時刻は既に夜7時。
妻には小学校で一夜を過ごしてもらうしかない。
あきらめて実家へ戻る。
妻と同じように,子供も大事。
二華中に避難している長男を,何としても迎えに行かなければならない。
長い長い一日は,まだ終わりそうになかった・・・。
・・・つづく。