・・・つづき。
新人教育は3ヶ月に渡って行われるという。
私の担当は,その初日の3日間である。
この3日間でいいスタートが切れるかどうかが大事。
教育期間中だけではなく,その後の技術者としてのあり方にも関わってくる。
そのためには・・・
3日間の間に,テストは3回行われる。
2日目の朝と3日目の朝に小テスト,
3日目の夕方に総合テストである。
テストには,点数を取らせるテストと,差をつけさせるテストの二通りがある。
小テストは前者を,
総合テストは後者を意図して実施した。
新人さんの大半は文系出身者。
なので小テストで点数を取らせ,自信を持たせるのだ。
小テストで出題する問題は情報処理技術者試験の午前問題の過去問で,講義で取り上げた問題である。
ただし,半分は意図的に選択肢を外しており,問題と答えを憶えただけでは簡単に正解できないようになっている。
総合テストではさらに,午前問題の選択肢を外した上で,数値を変更しておいた。
また,講義中に取り上げなかった午後問題を3問出題した。その3問中2問は選択肢なしである。
選択肢があるのとないのでは,難易度が段違いである。
自分が求めた答えが選択肢の中にあれば,安心してその選択肢を選ぶ事ができる。
選択肢の中になければ,解答に至る経路が間違っていると知ることができる。
答えが分からなくても,明らかな間違いを選択肢の中から外して絞り込むことができる。
しかし選択肢がなければ,それらは一切できない。
つまり「正解」を求めなければならないのである。
選択肢がない状態でも正解が導き出せる。
それは「本質的な理解」ができているという事を示しているのである。
テストの直前,新人さんを前に私はこう言った。
「皆さんの仕事は,自分の技術を使ってお客様の問題解決を行い,その対価として報酬を頂戴する事ですよね。」
私の態度から,重要な事を述べようとしている事が伝わったらしく,新人さんの目が一斉にこちらに集中する。
「でも,教育期間中は何の問題解決もしていませんよね。それはつまり『会社に食わせてもらっている』という事ですよね。」
口調は穏やかだが,新人さんにとってはかなり厳しい内容である。
何人かは目をそらし,下を向いてしまう。
「では新人教育の期間中に,皆さんは会社に対して,自分の努力をどうアピールすべきですか?」
こちらの問いかけを理解し,自分なりの答えを出すのを数秒待つ。
自分なりに答えを出した人もいれば,
私からの答えを待っている人もいる。
「結局,皆さんは会社に対して,テストでいい点を取る事でしか,自分の努力をアピールできないんですよ。厳しいようですが,結果が全てなんです。」
新人さんの背筋が「ピンッ」と伸びる。
取り組む姿勢が明らかに変わった瞬間。
「自分の役割」に気づいた瞬間でもある。
そして総合テストが始まったのであった・・・。
・・・つづく。