うちの工場は国道沿いで目立つためか,様々な「お客さん」が飛び込んでくる。
一番多いのが飛び込みのセールス。このような「お客さん」は相手をするだけで時間の無駄なので,丁寧に(時に少々怖い顔をして)お断りする事にしている。
次に多いのが「○○病院はどこですか?」という「お客さん」。
ご友人か,ご親戚のお見舞いだろうか。早く行ってあげたいのだが,病院の場所が分からない。そんな焦りを感じる。
「儲からない仕事で得を積む」という言葉を思い出しながら,丁寧に案内する。
本業である自動車整備に関しては,飛び込みのお客さんは滅多に来ない(かーっ,残念!)
ところがある日の事。
ガタイのいい,建設作業員風の男性が飛び込んで来たのである。聞けば仕事で使うトラックのキーを閉じ込んでしまったとか。相当困っている様子で,とりあえずドアを開ける道具を貸して欲しいと懇願される。
もちろん道具はある。思わず社長を見ると「いいから貸してやれ」という仕草。乗りつけた車に書いてある社名と連絡先を控え,道具を貸した。
今のドアは構造が複雑。道具があるからと言って,簡単に開けられるものではない。
案の定,その男性は数10分後に再度現れた。やはり開けられなかったらしい。今度は何と「とりあえず来てけさい」と懇願される。
とりあえずと言われても,JAFじゃあるまいし,キーを開ける作業の経験なんてない。思わず社長を見ると「どれ,工賃かかっけど,行くか」と言って腰を上げた。
社長に同行して現場に到着して唖然。憮然とした表情の,ガタイのいい兄さん方が15人程いる。
これだけの人数の仕事がストップしていたのだ。
親方らしき人が「開けられるんだろうな!」と先ほどの男性を怒鳴っている。
おー怖え~。
見ればトラックのキーが車内に放置されたまま,両方のドアがロックされている。
もう完全にどうしようもない状況。
ガラスを割るか?割るとしたらどこが一番修理代が安く済む?
そんな事を考えていると,社長が太い針金を取り出した。そして先端をプライヤーでチョイと曲げると,ある方法(♪企業秘密~)でドアの内側に差し込み,あっさりドアロックを解除した。
ドアを開けると,周囲から「おぉーっ」というどよめきが。
車体のどこにも傷をつけていない。かかった時間は数分。
お見事っ(by児玉清)
請求した工賃も,一回の飲み代相当の小粋な金額。
問題を技術で解決した瞬間を,この目で見せてもらった。